抄録
熊野酸性岩類北部 (北岩体 : 約14Ma) から試料を採取し, 古地磁気測定と岩石磁気実験を行った. 花崗斑岩1地点と珪長質溶結凝灰岩4地点で, 高温・高保磁力 (高T-C) 成分と低温・低保磁力 (低T-C) 成分の方位が決定された. 残留磁化の主な担い手は擬似単磁区のTiをわずかに含むチタノマグネタイトで, 残留磁化成分が分離できない地点はピロタイトを含むようだ. 低T-C成分は花崗岩貫入時 (花崗斑岩の後) に付着した熱粘性残留磁化であろう. 花崗斑岩と溶結凝灰岩の高T-C成分は, それぞれ花崗斑岩形成時の初生熱残留磁化及び再磁化と考えられる. 高T-C成分 (逆帯磁) は時計回りに偏向した偏角と深い伏角を持つ. これは本岩類南部 (南岩体) の方位と類似し, 両岩体の同時形成を示唆する. 同様に, 北岩体の方位は室生火砕流堆積物の方位とも一致し, 北岩体が室生の給源である可能性が出てきた. 時計回りに偏向した方位は通常とは異なる地磁気を記録したものだろう.