We undertook U‒Pb zircon dating to constrain the age of the Miocene succession in the Kinbusan area, eastern Tottori Prefecture, Japan. The succession has been correlated with the upper part of the Iwami Formation in the upper part of the Miocene Tottori Group. Recently, a new stratigraphic interpretation was proposed that correlated the succession with the lowermost part of the formation; however, there is no chronological constraint on the depositional age of the succession in the Kinbusan area. We carried out U‒Pb analysis of zircons from an ash-fall tuff in the succession to determine the age. The analysis yielded a mean age of 17.92±0.20 Ma (2σ) from the youngest age cluster. The occurrence of the tuff, the similar optical characteristics of the dated zircons, and the consistent ages indicate the mean age represents the depositional age of the tuff. The result supports the recent stratigraphic interpretation that the Miocene succession in the Kinbusan area is correlated with the lowermost part of the Iwami Formation.
鳥海山・飛島ジオパークは,活火山である鳥海火山を中心に,様々な地形地質,自然,文化的な見どころを有する日本ジオパークである.本巡検では,鳥海山・飛島ジオパークの地形地質・自然・文化サイトやビューイングスポットを8か所訪れ,鳥海山・飛島ジオパークのエリアにおける地形地質学的特徴に加え,それらと自然環境及び人間の歴史・文化との関わりを紹介する.庄内砂丘・西浜海岸では,庄内砂丘の地形的な特徴や,植生と人々の歴史との関わりを紹介する.釜磯海岸や元滝伏流水では,湧水と鳥海火山との関わりを見学する.三崎公園では,旧街道の散策を通じて,溶岩流,植生,歴史との関わりを見学する.道の駅「ねむの丘」や蚶満寺,駒留島では,鳥海火山の山体崩壊がつくる地形と歴史的な出来事との関わりを紹介する.最後に鉾立ビジターセンターでは,鳥海火山の形成史の概要や,地殻変動が創り出した地形を展望台から遠望する.
The Himenoura Group on Amakusa-Shimoshima Island, northern Ryukyu arc has been assigned to the Upper Cretaceous since the early 20th century based on molluscan fossils. However, zircon fission-track data suggested that the uppermost unit of the group contains a Paleocene succession. This hypothesis has yet to be verified. Here, we report a Campanian radiometric age from a vitric tuff in the uppermost unit of the group. We obtained the U–Pb ages of zircon crystals by laser ablation–inductively coupled plasma–mass spectrometry. The weighted mean age is 80.1±0.6(2σ) Ma (MSWD = 0.75, n = 27), which is consistent with the age of fossils in the uppermost unit of the group on neighbouring Amakusa-Kamishima Island, where the stratigraphy of the group has been established.
東北日本の地体構造単元には,「南部北上帯」のような西南日本には存在しない広大な複合地質帯が含まれている.この南部北上帯はマイクロプレートの性格を持ち,古生代前期の海洋性島弧–縁海の断片(オフィオライト)や島弧花崗岩類に加えて,古生代後期の高圧型変成岩類などを基盤とし,断続的に保たれたシルル紀から白亜紀までの陸棚堆積岩層が存在する.そして,これらの岩石には白亜紀の花崗岩類のプルトンが貫入し,古日本弧構成岩類の改変過程が保持されている.近年,南部北上帯の構成岩類は,日本海拡大以前のアジア大陸縁火山弧の地殻進化とテクトニクスを理解するための重要な研究対象として再評価され,例えば砕屑性ジルコンをもちいた地殻進化に関する研究に関しては,南部北上帯に固有の陸棚堆積岩層に着目することで西南日本よりも高解像度の連続的な情報が得られている.また,アジア大陸東縁の一部から現在の日本列島の形成に至る古地理を復元する研究において,南部北上帯の西端を定義する畑川断層およびそれに並行する双葉断層に沿った前期白亜紀の花崗岩を起源とする破砕帯は重要な地質研究素材である.この破砕帯は,白亜紀のアジア大陸東縁における大規模な横ずれ断層運動や,その後の背弧拡大に伴う大陸地殻の裂開やマイクロプレートの形成など,日本列島周辺域に固有の地質学的問題を解明する上で長年にわたって重要視されてきた.さらに,この破砕帯は,過去の内陸地震の地震発生域での物理化学過程を地表で直接観察できる化石断層として,非常に高い価値を持っている.本巡検コースでは,阿武隈山地の東縁で見られる古生代の高圧型変成岩や石灰岩など,南部北上帯を構成する岩石と,白亜紀以降の横ずれ断層によって生じたさまざまな変形岩を紹介し,それらについて現地での討論を目的とする.
月山周辺部は,東北日本でも有数の地すべり地形の集中する地域である.この巡検では現在活動的あるいは近年活動した地すべりにおいてその活動の痕跡や活動史を確認する.また,月山西面の山体崩壊に伴う流山地形を観察しながら立谷沢川流域に入る.立谷沢川は荒廃河川で現在国直轄での砂防対策工事が行われている.最上川を閉塞する可能性のあった黒渕地すべりの対策跡も訪問し,この地すべりが川越地すべりであったことも解説する.最後に山形への帰路上で鮭川断層などによる新規の断層変位地形を見る.
蔵王火山は,東北日本火山フロントに位置する成層火山である.2011年の東北日本太平洋沖地震の後に火山活動の活性化が観測され,2015年と2018年には警報が出された.本火山は約100万年間の噴火の歴史を持ち,様々な様相の活動を経てきている.この巡検では,その長期に亘る山体形成の推移を把握していただけるように観察ポイントを選定した.長期的な火山活動の推移の視点から,最近の火山活動の活性化を捉えていただければ幸いである.
鹿児島県種子島北部の,熊毛層群門倉岬層が分布するとされた地域の層序,地質構造,そして地質年代を検討した.結果,内陸部に分布する門倉岬層は逆断層により4つの構造ユニットに区分されることが判明した.その構造的最上位の構造ユニットから産出した放散虫化石によると,その年代は中期始新世後期(放散虫化石帯RP16帯)にあたることが判明した.一方,従来門倉岬層が分布するとされていた海岸部に分布する地層の年代は,放散虫化石の検討の結果,前期漸新世後期(放散虫化石帯RP21a帯下部)にあたることが判明した.その岩相も考慮すると西之表層が本地域に分布していることが判明した.このことは,熊毛層群の分布域や構造は,今まで言及されてきたものより遥かに複雑であることを示唆する.今後熊毛層群の地質を明らかにするためには,本島中部や南部においてもより詳細な地質調査にもとづく層序や地質構造,年代の検討が不可欠である.
本研究では西南日本の山陰バソリスに産するメタアルミナス組成の高田花崗閃緑岩の地質学的位置づけを明確にした.この岩体は小木石英閃緑岩という細粒石英閃緑岩との混成を経験している.高田花崗閃緑岩は中~粗粒普通角閃石黒雲母トーナル岩~花崗閃緑岩,中~粗粒普通角閃石含有黒雲母花崗閃緑岩,および粗粒斑状黒雲母花崗岩で構成される.
この岩体の全岩化学組成は組成変化図上でブロードなトレンドを成し,ジルコンのU–Pb年代は約65~60 Maの幅広いばらつきを持つ.これらは岩体が複数のマグマ活動により形成したことを示す.マグマ活動のピークは61 Ma頃で山陰火成活動の因美新期にあたり,周辺花崗岩体よりも早くに活動している.したがって高田花崗閃緑岩は山陰バソリスの主要形成期における最初の活動として重要である.
山形県南西部の朝日山地と飯豊山地の間に分布する中新統は,日本海拡大に関連した東北日本のリフティングと地殻運動の証拠を記録している.この地域では,2300~2200万年前(23~22 Ma)に発生した大規模火砕噴火,18 Ma前後の弧内リフトの発達,17.5 Ma頃の火山活動,17.0~16.5 Ma頃の温暖期における海進とそれとほぼ同時に起こった褶曲,その後の深海化と後期中新世における海退といった,日本海拡大期とその後に発生した様々な地質学的現象の証拠を認めることができる.また,古地磁気の研究によって,リフト発達後に地殻のブロック回転が起こったことも明らかにされている.この度,日本地質学会学術大会(第131年大会)が38年ぶりに山形で開催されることになり,それにあわせてこの地域での巡検が企画された.この巡検ではリフティングとその後の地殻運動を記録する地層・岩石などを観察する.加えて,この巡検では2022(令和4)年8月初旬に発生した記録的豪雨による災害の現場も訪ね,豪雨による災害について地質と関連づけながら理解を深める.
松島湾は日本三景の一つに数えられる風光明媚な多島海として有名で,湾内の島々や半島は主に新第三系の松島湾層群,志田層群および仙台層群の岩石によって形成されている.同地域の新第三系の層序は珪藻,古地磁気,各種放射年代により,詳細に年代が明らかになっており,日本海拡大時の引張応力場の発達から,鮮新世以降の東西圧縮に至る東北日本弧前弧域のテクトニクスを反映した堆積盆の変遷を記録している.また,同地域は1980年代に作成された地質図幅に加え,1990年代~2000年代にかけて実施された各種地球物理探査により,陸域,海域共に表層および地下の地質構造が明らかになっている.本巡検では,松島湾層群と志田層群の岩相および地質構造を観察し,中新世から現在に至る東北日本前弧域のテクトニクスと堆積盆の発達史を概観する.また,完新世の砂洲や松島湾の地形を見学し,どのようにして現在の松島の景観が形成されたかについて総合的に理解することも目的とする.
本巡検では,蔵王火山西部蔵王沢上流域の蔵王鉱山跡地一帯に分布する変質帯を伴う火山岩類を対象とする.対象地一帯はかつて硫黄鉱床を採掘していた場であり,鉱体部を伴う珪化ないし粘土化変質帯,および母岩の火山岩類との接触部がよく露出している.母岩は,蔵王火山西部に分布する中期~後期更新統の火山岩類である.蔵王鉱山跡地の周囲にて採鉱に使われていた坑道は,閉山に伴い全て埋められているが,かつての水平坑の一つである「旧48 m坑」については新たな崩落によって坑口付近が露出し,坑道内部の鉱体部を観察することができる.本巡検コースでは,蔵王沢沿いおよび旧48 m坑にて露出している,中期~後期更新統の火山岩類に胚胎された変質部ならびに鉱体部の直接観察によって,蔵王火山で過去に存在した火山熱水系とそれに由来した噴気・地熱活動の理解を進める.
We present a three-dimensional geological model that reveals the detailed geological structures beneath Tsukuba City and the surrounding area in Ibaraki Prefecture, Japan. This model was created using numerous borehole logs and is based on the stratigraphic framework of Sakata et al. (2018). It shows the distribution of a buried valley filled by the lower part of the Kioroshi Formation (MIS 5e). As the valley-fill deposits consist mainly of soft muddy sediments with low N-values, a detailed understanding of the deposits is required for geological risk assessment. The model enables an intuitive understanding of the subsurface geological structures and can help non-expert stakeholders, including citizens and government officials, understand geological and geotechnical issues. In addition, as the model is provided in a digital format, it is compatible with urban digital transformation including smart cities, and will promote the social implementation of geological and geotechnical data.
関東平野中央部における清川層の側方への層相変化及び清川層と木下層下部の層相・物性の差異を明らかにする目的で,千葉県野田市山崎でボーリング調査(GS-ND-2)を行った.本ボーリングコアの清川層は下位から陸成層,海成層,陸成層と変化する.同様の層相変化は柏GS-KW-1コアにも認められ対比されるが,両者の層相と花粉帯境界は斜交し,調査地域では南側ほど海退が遅れたことが示唆される.清川層の泥層と木下層下部の泥層はN値と花粉化石群集に明確に違いがあり,両者の判別に有効である.持続的な地下水利用や地震災害リスク評価の観点からも清川層の層相変化様式や木下層下部の軟弱な泥層の分布を把握することが重要である.
高知県室戸市岩戸の奈良師–元海岸には,貝類や鯨類化石が産出する堆積岩体が分布する.我々は,この岩体を唐ノ浜層群奈良師層として新たに記載し,浮遊性有孔虫化石と石灰質ナノ化石から堆積年代を推定した.両者の検討結果から,奈良師層の堆積年代は5.53–4.37 Maに絞られる可能性が高いことが明らかとなった.併せて筆者らは,奈良師層より産出した貝化石群集から堆積場の古環境を復元した.本化石群集には,現生の上浅海帯に生息する種が含まれることから,奈良師層は水深20–30 m以浅の上浅海帯に位置していたと考えられる.また本化石群集には,鮮新世から更新世ジェラシアン期に特徴的な貝類動物群である掛川動物群の構成種が多数含まれる.一方で,中新世メッシニアン期から鮮新世ザンクリアン期にかけての貝類動物群である逗子動物群の特徴種は産出しない.このことから四国では,4.37 Maまでには掛川動物群への移行が完了していたと考えられる.
A fragmentary hind wing of a fossil Cicadidae was obtained from Lower Miocene lacustrine deposits of the Masaragawa Formation in Seki, Sado City, Niigata Prefecture. Based on unique characteristics, such as the quite short apical cell 1 and partial preservation of small wing, the specimen is identified as Cicadidae gen. et sp. indet. The fossil does not having close relatives in modern Japan or East Asia. This occurrence is the oldest fossil record of a cicada in Japan.
兵庫–鳥取県境の海岸部において,下部中新統火山岩類の地質調査と岩脈法による応力解析を行い,以下の知見を得た.鳥取県域の鳥取層群河原火山岩部層と兵庫県域の北但層群八鹿層は,岩相が類似しており同時期の一連の地層と判断される.これらの火山岩類は基盤と高角不整合の関係にあり,東西走向で北落ちの窪地を埋積したものと推定される.同様の構造は調査地域の約10 km東方でも見出されており,この古地形の成因は火山岩類の堆積以前の断層活動である公算が大きい.火山岩類と同時期の63枚の岩脈の方向解析で,北北東–南南西引張の正断層型応力を得た.これは他地域の北但層群の岩脈の解析の結果と類似しており,北但盆地の応力状態の空間的一様性を示す.
下北半島には中部中新統の檜川層が広範囲に分布している.本研究では同半島西部,仏ヶ浦周辺地域を中心に地質調査及びジルコンU-Pb年代測定を行い,檜川層の年代層序の再検討を行った.檜川層の模式地である檜川流域からは13.4 Maの年代が得られ,先行研究と一致した.一方,仏ヶ浦周辺域では扇状陥没構造が確認され,仏ヶ浦凝灰岩と福浦流紋岩溶岩が充填していることから,これらはカルデラ形成期の産物であると考えられる.カルデラ東方に分布する縫道石山貫入岩体のU-Pb年代は4.7 Maであり,仏ヶ浦凝灰岩と福浦流紋岩溶岩はそれぞれ4.5 Maと4.4 Maであった.また,カルデラ東南部の境界付近に分布する丸山流紋岩溶岩の年代は4.0 Maであり,後3者を仏ヶ浦カルデラ噴出物と新たに定義する.また,本調査地域の東部から南部にかけて上部中新統の牛滝凝灰岩(7.6 Ma)が新たに見い出され,下北半島西部の上部中新統については,さらなる検討が必要である.
本論文では,琉球弧における,島弧発達のタイミング,様式および地形発達について,第四紀の地殻変動の観点でレビューを行い,琉球弧の島々の隆起・沈降の傾向と琉球弧島弧を分断する凹地(トカラ構造海峡, 慶良間海裂, 与那国凹地)の形成時期や形成プロセスについて議論する.琉球弧の三つの凹地では,トカラ構造海峡および慶良間海裂の2つの凹地と与那国凹地では発達する正断層の主な走向が大きく異なる.琉球弧の島弧では隆起と沈降のそれぞれの開始時期には空間的なばらつきがある.今後の琉球弧のネオテクトニクスの理解に向けた課題としては,ネオテクトニクスの捉え方,ネオテクトニクスを踏まえたさまざまな地形形成環境と営力を組み合わせた地形発達の理解,および島弧で進行している地殻変動の理解における地質学の貢献が重要である.
兵庫県但馬地域は京都市から西北西へ約100 kmの地点に位置しており,舞鶴帯南帯に属する夜久野オフィオライト朝来岩体が露出している.本見学コースでは,兵庫県朝来市,但馬地域に露出する夜久野オフィオライト朝来岩体について見学する.朝来岩体は島弧下~中部地殻断面に相当する部分を見ることのできる場であり,本コースでは最下部のミグマタイト帯から中部地殻相当の珪長質貫入岩までの一連を観察する.また最近報告されている舞鶴帯についての新たな知見についても紹介する.
近年,断層破砕帯を用いた断層活動性評価手法を開発するため,後期更新世以降活動している活断層と,少なくとも後期更新世以降活動していない非活断層で,それぞれ調査・研究が実施されてきている.本研究では,山口市阿東生雲東分渡川に分布する活断層と非活断層を構成する断層ガウジと滑り面の微細構造と,熱水粘土脈の構成鉱物を偏光顕微鏡,XRD,SEM,およびSTEMを用いて解析・比較した.なお,本研究で解析した活断層は,既往研究で長門峡断層と呼ばれている.偏光顕微鏡解析の結果,ガウジ破片(Reworked fault gouge)が活断層の断層ガウジに見つかったが,非活断層の断層ガウジには見られなかった.SEMおよびSTEM解析の結果,非活断層の最新滑り面はランダム配列したイライトに覆われ,重晶石群に横断されていた.このことは,非活断層がこれらの鉱物の生成後に活動していないことを示している.一方,活断層の最新滑り面には鉱物のランダム配列や横断は見られなかった.
The Ashizawa Formation of the Futaba Group in the Iwaki area, northeast Japan, is considered to be early to middle Coniacian in age. Three inoceramid species, Mytiloides incertus (Jimbo, 1894), Cremnoceramus waltersdorfensis waltersdorfensis (Andert, 1911), and “Cremnoceramus rotundatus” (sensu Matsumoto and Noda, 1985), have been newly discovered in this formation. These fossils are indicative of a late Turonian age, and thus deposition of the Futaba Group probably started earlier than previously thought.
The late Heian period stone statues at Anraku-ju-in Temple in Kyoto City are made of tuff that is believed to be sourced from Mt. Hiyama, Sanuki City, Kagawa Prefecture. The authors conducted lithological observations and magnetic susceptibility measurements at tuff quarry sites in the Sanuki Group to compare the stone with the stone of the statues at Anrakuju-in Temple. The results show that the stone statutes of Anrakuju-in Temple were not quarried from tuff at the known quarry sites. Therefore, the stone was sourced from unknown quarries in Kagawa Prefecture or quarries outside of Kagawa Prefecture.