抄録
本研究では,2000年鳥取県西部地震の余震域とその周辺地域の地表踏査を行い,地質学的手法を用いて,この地域の断層系の推定を試みた.地表踏査では断層岩類の分布,密度,幅,姿勢,変位量,色相,剪断面密度などの記載を重点的に行った.調査地域に分布する断層面の姿勢は,WNW-ESE走向とNE-SW走向,高角度に卓越している.これは地形から判読されたリニアメントや地震学的に求められた震源断層モデルのNW-SE走向の姿勢とは,若干異なっている.さらに,断層岩類と玄武岩~安山岩質岩脈は,分布・姿勢に相関関係が認められる.これらの岩相境界,特に母岩である花崗岩側に,多くの破砕帯が形成されている.これらの結果より,余震域では今回の地震以前にも断層運動が繰り返し生じ,岩脈によって活動していることが推定できる.また,生成深度の異なるカタクレーサイト,断層ガウジが共に地表に存在していることからも,複数回の断層活動が生じていたことが明らかとなった.