抄録
ユーラシア東縁におけるテクトニクスを解明するため,北海道中央南部・浦河地域に分布する白亜系蝦夷累層群の古地磁気学的研究を行った.5地点から得られた特徴的残留磁化はマグネタイトによって担われ,傾動前に獲得したと考えられる.磁化率異方性ファブリックと異方的な等温残留磁化獲得パターンから,堆積および残留磁化固定後に有意な伏角浅化が生じたと考えられ,伏角誤差は4~11°の範囲であった.浅化の補正後も伏角は異常に浅い値(31°)を示す.伏角値が地磁気極性層序のクロンC33r~C32rに対比されることを考慮すると,浦河地域を含むブロックは3400 kmの北方移動を被ったことになる.回転量も非常に大きいことから,北方移動は大陸縁辺の横ずれ断層運動によって引き起こされたのかもしれない.白亜系蝦夷累層群は,離れた大陸縁辺で発達し,斜め沈み込みによって北上した異地性の地塊を含むと考えられる.