地質学雑誌
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論説
前弧海盆に発達した化石海底谷システム:中新-鮮新統宮崎層群“宮崎相”の堆積学的解析
高清水 康博
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2009 年 115 巻 11 号 p. 559-577

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抄録

後期中新世~鮮新世の宮崎層群中部層準“宮崎相”は,地形的に活動的な後背地,狭い陸棚,急な海底斜面とそれに連続する緩やかな斜面から構成される前弧海盆充填物である.斜面上の粗粒堆積体で鹿村野層を構成する扇状地性三角州からの堆積物が,“宮崎相”に良く保存されていた.“宮崎相”からは15の堆積相が認定され,それらの特徴や流れ様式から,5つの堆積組相にまとめられる.すなわち,石灰岩からなる堆積組相CR,河川の営力による堆積組相FL,波浪や暴浪の営力による堆積組相WS,懸濁物質の沈積による堆積組相Su,そして重力流によってできた堆積組相GFである.堆積学的および地質学的解析の結果,斜面上に海底谷システム(“鹿村野海底谷”)を認めた.
相対的海水準上昇時には,扇状地性三角州は,陸棚外縁まで前進できず,陸棚上は細粒な堆積物によって覆われる.一方,相対的海水準下降時には,狭い陸棚(およそ幅2 km)のために,扇状地性三角州は,容易に陸棚外縁まで前進し,直接に粗粒堆積物を海底谷へ供給することができる.

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© 2009 日本地質学会
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