抄録
山口県北西部に分布する後期白亜紀阿武層群白滝山層の層序・構造および貫入岩類の活動史について検討した.白滝山層は下位の蓋の井川流紋岩部層と上位の天井ヶ岳安山岩部層に2分され,これらは各種岩脈とともに流紋岩と安山岩のバイモーダルなマグマからなる火山-深成複合岩体をなす.
白滝山層は盆状構造を示し,北半分は盆地の中央へ向かい約45-70°と高角傾斜を示すが,南半分は中央へ向かい20°以下の低角傾斜を示す.このように白滝山層は南北で非対称な盆状構造をなし,周辺に分布する基盤岩類の地質構造と斜交し,それらと高角の正断層あるいは岩脈などによって囲まれた6×4 kmの小規模なコールドロンを形成していることが明らかになったので,白滝山コールドロンを提唱する. これは陥没深度が北側で深く南側で浅い非対称な陥没形態を有しており,多角形の陥没縁の形成と同時にカルデラ底の破断を伴ったピースミール型コールドロンの可能性が高い.