地質学雑誌
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論説
関東山地秩父累帯の山中白亜系瀬林層より産出したバレミアン期テチス型二枚貝群集
寺部 和伸松岡 篤
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2009 年 115 巻 3 号 p. 130-140

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抄録

群馬県神流町瀬林地域に分布する山中白亜系瀬林層上部層から,21属25種の二枚貝化石およびアンモノイド化石からなる軟体動物化石群集が産出した.この軟体動物化石群集はNeithea matsumotoiなどを含み,アルビアン階とされる九州の先外和泉層群八代層からの二枚貝群集との共通性が高く,テチス型動物群であると見なされる.アンモノイド群集はCrioceratitesParacriocerasasiaticumを含みバレミアン階を指示する.従来,八代層に特有とされていた二枚貝化石は,その産出レンジがバレミアン階まで下りることが明らかになった.山中白亜系の物部川層群相当層からテチス型動物群が産出したことは,横ずれ断層による下部白亜系の構造的再配列だけでは古生物地理を説明できないことを示している.また,瀬林層は,海水温が高くなった環境で堆積したと考えられる.

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© 2009 日本地質学会
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