地質学雑誌
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論説
堆積岩からの砒素の溶出過程と風化に伴う溶出量の変化
北海道中央部,中新統川端層および軽舞層の例
高橋 良垣原 康之原 淳子駒井 武
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2011 年 117 巻 10 号 p. 565-578

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抄録
中新統の川端層と軽舞層を対象として,砒素の溶出過程と風化に伴う溶出量の変化について検討した.両層ともに粘土鉱物としてスメクタイト,緑泥石,およびイライトを含む.砒素溶出量は溶出液のpHが8.5を超えると急激に増加する.これは鉄酸化物・水酸化物に吸着している砒素がpHの上昇に伴って溶出していることを示す.溶出液のpHはスメクタイトの層間イオンのNa+が溶出液中のH+と陽イオン交換することで上昇している.川端層の岩石は軽舞層よりもスメクタイトを多く含むため,溶出液のpHが上昇する傾向がある.そのため砒素溶出量が高くなる.岩石の風化に伴って,スメクタイトの層間イオンはNa+からCa2+などへと変化する.Na型と比較して,Ca型のスメクタイトは陽イオン交換性が小さい.そのため,両層ともに風化岩では未風化岩よりも溶出液のpHが低くなり,それに伴って砒素溶出量が小さくなる.
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© 2011 日本地質学会
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