地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
論説
阿寺断層の垂直変位量と活動開始時期に関する熱年代学的研究
山田 国見安江 健一岩野 英樹山田 隆二梅田 浩司小村 健太朗
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 118 巻 7 号 p. 437-448

詳細
抄録

垂直変位を伴うA級の左横ずれ活断層である阿寺断層の周辺から採取された地表・ボーリングコア試料に対してフィッション・トラック法による解析を行い,垂直変位量と活動開始時期を推定した.その結果,熱年代学に基づく約70 Ma以降の阿寺断層の垂直変位量は約1 kmであり,断層を挟んだ基盤岩や地形の高度差に基づいて推定された阿寺断層の垂直変位量と変わらないこと,また現在の破砕帯内で現在の断層に沿って20 Ma頃ないしそれ以降でおそらく第四紀以前に広い範囲で加熱があったことが明らかになった.前者は阿寺断層の約70 Ma以降の総垂直変位量が現在の活動様式による垂直変位量で説明できることを意味し,現在の変位様式の活動が第四紀初頭以降に開始したという従来の見解と整合的である.後者はこの時期には既に破砕帯が存在し,おそらく断層運動が始まっていたことを示す.したがって阿寺断層の現在の活動は,かつて存在した古阿寺断層の再活動に当たると考えられる.

著者関連情報
© 2012 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top