2015 年 121 巻 12 号 p. 447-462
九州の熊本県八代山地の先外和泉層群の層序はこれまでにもいくつか提案されているが,最近の報告間には八竜山層,袈裟堂層および今泉川層の分布・層序に相違がある.そこで,本研究では日奈久帯中部の先外和泉層群の層序および地質構造の全体像を調査した.調査の結果,層序は下位から川口層,八竜山層,袈裟堂層および今泉川層であることがわかった.また,調査地東部では袈裟堂層と今泉川層は分布が確認できるが,西部では袈裟堂層の分布のみが見られなくなることがわかった.地層群間の関係は,従来報告されていたように,八竜山層と袈裟堂層は整合,八竜山層と今泉川層は非整合関係であることが確認できた.一方で,従来の報告とは異なり,調査結果は袈裟堂層と今泉川層の関係が傾斜不整合であることが明らかになった.これは,今泉川層の堆積以前のバレミアン〜アプチアン期に,八竜山層と袈裟堂層が褶曲したことを示している.