地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
論説
飛騨地方の中新世岩脈群から得られた古地磁気方位の地質学的意味
杉崎 雄一星 博幸
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 123 巻 11 号 p. 953-967

詳細
抄録

岐阜県飛騨地方の高根地域に分布する安山岩質平行岩脈群と斑れい岩について地質と岩石磁気・古地磁気を調査した.前期中新世の安山岩質岩脈群からは「新しい岩脈法」によって2つの正断層型応力状態が推定された.安山岩の主要な強磁性鉱物は磁鉄鉱で,いくつかの岩脈には磁硫鉄鉱も含まれる.磁鉄鉱が担う磁化方位は東偏する.その方位は岩石磁気学的に高い信頼性を有するが,傾動の評価が難しい.方位の東偏は時計回り回転または北西への傾動を想定することで説明でき,前者の可能性が高い.この地域では岩脈群形成後に北中国地塊に対して約45°の時計回り回転が起こり,これは日本海拡大に関連した西南日本の時計回り回転を示すに違いない.高根と東海地方,北陸地方の間では大きな相対回転が起こっていない.伊豆弧衝突による回転の影響は高根までは及んでいないようだ.岩脈群形成時の応力状態は地磁気永年変化を平均化できるほどの期間継続していたと考えられる.

著者関連情報
© 2017 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top