地質学雑誌
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総説
日本列島付加体中に胚胎する古海洋底で生成した鉱床
野崎 達生藤永 公一郎加藤 泰浩
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2018 年 124 巻 12 号 p. 995-1020

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抄録

日本列島は主に過去4億年以降の付加体から構成されており,付加体中には古海洋底で生成した様々な鉱床が胚胎している.本論文では,別子型硫化物鉱床,層状鉄マンガン・マンガン鉱床に関する成因論の進展と未解明の課題をレビューする.三波川帯に分布する別子型鉱床は遠洋域の中央海嶺で生成し,ジュラ紀後期海洋無酸素事変によって保存された.現地性緑色岩を伴う四万十帯北帯の別子型鉱床は,白亜紀後期の海嶺沈み込み現象に付随して生成した.他のメランジュ中に胚胎する別子型鉱床については未解明の点が多い.層状鉄マンガン鉱床は,中央海嶺近傍の熱水性堆積物を起源とし,緑色岩を伴う層状マンガン鉱床は海山近傍の熱水性堆積物に由来する.チャート中に胚胎し緑色岩を伴わない層状マンガン鉱床は,貧酸素・高マンガンの深層水に高酸素・貧シリカの表層水流入によって形成したと考えられるが,マンガンの究極的な起源についてはいまだ不明である.

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© 2018 日本地質学会
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