地質学雑誌
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総説
深海成層状チャートの堆積リズムに記録された天文学的周期とその生物地球化学的意義
池田 昌之
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2018 年 124 巻 12 号 p. 1033-1048

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抄録

地球軌道要素変化のミランコビッチ・サイクルは地球環境変化のペースメーカーである.この周期性を万年オーダーの時間目盛とする天文年代学により,新生代の年代学や古環境学は飛躍的に発展し,さらに古い時代へと展開している.中古生代の層状チャートはチャートと頁岩のリズミカルな互層からなり,この堆積リズムがミランコビッチ・サイクルに起因した可能性が古くから指摘されてきた.近年,ペルム-白亜系層状チャートの化石層序と古環境指標の周期解析により,ミランコビッチ・サイクルの認定基準である堆積リズムの周期と階層性が確認された.さらに,天文学的年代モデルを用いて堆積速度や物質収支を推定した結果,チャートを構成する生物源シリカは海洋溶存シリカの主要シンクであり,主要ソースである珪酸塩風化速度の変化を反映した可能性が示された.ミランコビッチ・サイクルに伴い超大陸パンゲアのメガモンスーン強度が変化するため,この生物地球化学的シリカ循環を介して層状チャートの堆積リズムが形成されたと考えられる.

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© 2018 日本地質学会
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