2020 年 126 巻 12 号 p. 663-678
岡山県真庭市久世町から苫田郡鏡野町を経て津山市に分布するジュラ系智頭コンプレックスについて小構造を調べた結果,このコンプレックスにはテクトニック・メランジュに由来する岩石が含まれていることが明らかとなった.変形構造の解析から4つのステージの変形が識別できた.ステージ(1)では層に平行な伸びと展張割れ目が形成され,ステージ(2)では層にほぼ平行な単純剪断による非対称な構造とblock-in-matrix構造の形成およびそれに伴う細粒化が起きている.砂岩のクラストの中で細粒化した箇所では,粒界すべりに伴って変形が進んでいる可能性がある.ステージ(3)では層に垂直に働く純粋剪断によってスレートへき開が形成され,板状鉱物の再結晶による平行配列,放散虫の扁平化および黄鉄鉱の周辺で対称的なプレッシャーシャドウが形成されている.ステージ(4)ではスレートへき開を曲げるような圧縮場でちりめんじわへき開が形成されている.ステージ(2)で形成されたY-P複合面構造から,日本海の形成に伴う西南日本の回転を考慮して,上盤が北北東に移動する剪断センスが得られた.