地質学雑誌
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論説
北部九州東部に分布する田川変成岩類の変成作用
柚原 雅樹 清浦 海里日髙 万莉亜外田 智千早坂 康隆
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2021 年 127 巻 8 号 p. 447-459

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抄録

北部九州東部に分布する田川変成岩類は,主岩体と本庄岩体からなる.本変成岩類は主に泥質~砂質片岩と角閃岩から構成される.泥質~砂質片岩には,黒雲母,グラファイトおよび繊維状珪線石の定向配列が認められ,菫青石とざくろ石はそれらの鉱物を包有する.これは,田川変成岩類が角閃岩相の高温低圧型の広域変成作用を被ったことを示唆する.主岩体と本庄岩体の変成条件は,それぞれ,530-600°C,0.3-0.4 GPa,600-650°C,0.2-0.3 GPaと見積もられる.落合花崗閃緑岩と真崎花崗岩による接触変成作用で生成されたと考えられる紅柱石斑状変晶は,黒雲母やグラファイトを包有する.砂-泥質片岩中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代は,約250 Maと約1850 Maに主要なピークを持つ.これらの年代ピークは久留米-大牟田地域の周防変成岩類中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代のピークと類似する.したがって,田川変成岩類は周防変成岩類に属する.本変成岩類は,低温高圧型の周防変成作用と白亜紀花崗岩類による接触変成作用の間に,高温低圧型広域変成作用を被った.

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© 2021 日本地質学会
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