地質学雑誌
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論説
北海道南西部,濁川火山カルデラ噴火の軽石礫に認められる高Ba異常とその成因:岩石組織および化学組成からの検討
金田 泰明 長谷川 健井村 匠
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2023 年 129 巻 1 号 p. 615-631

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抄録

北海道南西部,濁川火山のカルデラ噴火堆積物を対象に,高Ba異常を示す灰色軽石(高Ba灰色軽石)の成因を検討した.同一堆積物内で共存する通常の灰色軽石(低Ba灰色軽石)と比較すると,両者は斑晶組合せや火山ガラス組成が一致する一方で,高Ba灰色軽石にのみ石基の気泡部分に細粒(粘土質)充填物が認められた.充填物は,化学組成およびX線回折パターンから,鉄アロフェンおよびカオリナイトなどの変質物質からなり,高いBa含有量を持つことから,高Ba異常の原因はこれらの充填物,すなわち変質作用によるものと考えられる.充填物を包有する火山ガラスが新鮮であることや各ユニット中の構成物量比変化などから,高Ba灰色軽石を生成した熱水変質作用は,本質物質(軽石)が火口内でリサイクルされるような,一連の噴火期間内の短いプロセスで進行したと考えられる.

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