地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
論説
高瀬川・鹿島川の蛇紋岩礫の岩石学的性質とその地質学的意義:河床礫岩石学の重要性
荒井 章司 江島 輝美田村 明弘輪湖 恵美森下 知晃石丸 聡子
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 129 巻 1 号 p. 643-654

詳細
抄録

長野県北西部,高瀬川・鹿島川に見出される蛇紋岩礫は,鹿島川の上流に向かい出現頻度が増し,有明花崗岩(古第三紀初期)分布域である飛騨山脈主稜(遠見尾根上部~五竜岳・鹿島槍ヶ岳)付近からもたらされたものである.花崗岩中に分布するとされる小規模な蛇紋岩体由来であろう.蛇紋岩礫はトレモラ閃石,タルクを含むが,直方輝石を欠き,軽度の接触変成作用を受けている.岩石学的性質は八方尾根のものに似るが,トレモラ閃石がNaに乏しいこと,かんらん石がしばしばFeに富む(Fo83まで)こと等が異なる.小規模にもかかわらず接触変成度が低いことから,マグマに取り込まれた岩塊ではなく,花崗岩中に構造的に取り込まれたものである.また,八方尾根岩体のトレモラ閃石帯に相当する岩相を欠き,原岩の変成度も低い.これらは,この地域の第四紀の変動の激しさを物語っている.地形の険しい山岳地帯の地質調査には礫の検討が極めて有力である.

著者関連情報
© 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top