地質学雑誌
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論説
高知県室戸市岩戸に分布する新第三系の微化石層序と貝化石群集:四国における掛川動物群の最古記録とその古生物地理学的意義
山岡 勇太 萩野 恭子林 広樹近藤 康生菊池 直樹
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2024 年 130 巻 1 号 p. 205-221

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抄録

高知県室戸市岩戸の奈良師–元海岸には,貝類や鯨類化石が産出する堆積岩体が分布する.我々は,この岩体を唐ノ浜層群奈良師層として新たに記載し,浮遊性有孔虫化石と石灰質ナノ化石から堆積年代を推定した.両者の検討結果から,奈良師層の堆積年代は5.53–4.37 Maに絞られる可能性が高いことが明らかとなった.併せて筆者らは,奈良師層より産出した貝化石群集から堆積場の古環境を復元した.本化石群集には,現生の上浅海帯に生息する種が含まれることから,奈良師層は水深20–30 m以浅の上浅海帯に位置していたと考えられる.また本化石群集には,鮮新世から更新世ジェラシアン期に特徴的な貝類動物群である掛川動物群の構成種が多数含まれる.一方で,中新世メッシニアン期から鮮新世ザンクリアン期にかけての貝類動物群である逗子動物群の特徴種は産出しない.このことから四国では,4.37 Maまでには掛川動物群への移行が完了していたと考えられる.

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