地質学雑誌
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中国海南島のテクタイトとシュードタキライト
林 愛明宇田 進一
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1997 年 103 巻 7 号 p. XXIII-XXIV

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抄録

テクタイトは地表に産する黒曜石に類似した天然のガラス質物質であり, 中国では, 紀元十世紀の唐の時代にすでに詳しく記載されており, “雷公墨”と名付けられている(李, 1963). テクタイトは, オーストラリア, 北米, 東南アジア, アフリカ北部, チェコスロバキアなどに分布している(Glass, 1990). テクタイトの成因については, 巨大隕石の衝突に伴い地表の岩石が熔融して形成されたという地球成因説(Glass, 1990)と, 月表面の火山物質(または宇宙物質)が隕石の衝突で飛散し, 地球に飛来したという月(または宇宙)成因説(O'keefe, 1976)などがあるが, いずれも成因を衝突熔融に求めている点では共通している. テクタイトの化学組成は地球物質起源のものが多いことから, 前者の説が有力になりつつある. 今回紹介する海南島のテクタイトの産地には, 不規則な割れ目の発達した砂岩中にシュードタキライトも発見されている(第10, 11図). この地点の周辺に明瞭な断層が存在していないことと隕石坑が存在していることから, このシュードタキライトはテクタイトとともに隕石衝突熔融によるものと考えられる.
中国海南島に産するテクタイトは Hainanite と命名されている(李, 1963). そのフィッショントラック年代は約70万年であり, 東南アジアおよびオーストラリア産のテクタイトの年代とほぼ一致している(厳ほか, 1979). このテクタイトの産出層は海南島およびその周辺地域の第四系および古地形面の形成時代の鍵層として利用されている.

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