地質学雑誌
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四国西部, 八幡浜大島のシュードタキライト
小松 正幸宮下 由香里米虫 聡
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1997 年 103 巻 8 号 p. XXV-XXVI

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抄録

シュードタキライトは急激な断層運動によって断層面の岩石が摩擦熱のために溶融し急冷固結した脈状のガラス質岩石である. 岩石を溶かすほどの高温を生じる断層運動は地震を起こす急激な破壊によって起こったものと見なされ, その意味でシュードタキライトは地震の化石と呼ばれている(高木, 1991; 嶋本・長濱, 1991). 日本列島は大断層が多く, 古い時代から地震が多発していたと考えられるが, シュードタキライトの産出例は意外に少なく, 明瞭な注入脈状のものは北海道日高帯で報告されている(Toyoshima, 1990)に過ぎない. ここに示したものは大島変成岩(高木, 1991; 武田ほか, 1993)と呼ばれる火成岩源の高度片麻岩中に発達する幅3~4mの脆性断層帯に伴うもので, この種の断層は約200mの距離をおいて岩体中に2帯(A, B)確認されている. シュードタキライトは主として主要断層面に平行な面(Y)とリーデル勇断面(R1)に挟まれる平行脈と, これらの面に高角な割れ目(T)に沿って注入した非平行脈としてみられ, 主要断層面から派生したスラスト勇断面(P)には少ない. 脈の最大厚さは3~4cmに達する. 厚い脈は急冷縁をもち内部は微細な急冷結晶が密集する。ガラスは変質のため残存しないが, 母岩の破砕結晶の間を充填する基質のなめらかな構造, 急冷結晶やバブルの存在から大部分はガラスによって占められていたことが分かる。詳細は追って報告する.

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