抄録
沖縄諸島には, 秩父南帯のジュラ紀~白亜紀古世付加コンプレックスが分布する.本研究では, 最も大陸側に位置する伊平屋島および伊是名島の付加コンプレックス(伊平屋ユニット)を対象として, 放散虫化石を用いた生層序学的研究を行った.その結果, 石炭紀新世~トリアス紀中世の層状チャートやジュラ紀古世~中世の泥岩などから構成される海洋プレート層序が復元され, 本ユニットはジュラ紀中世前期に形成された付加コンプレックスであることが明らかになった.さらに, 既報の研究成果と筆者らの検討結果に基づいて, 秩父南帯の付加コンプレックスを形成年代の異なる三つの地質ユニットに区分し, 各ユニットの海洋プレート層序の復元を試みた.これらのユニットは構造的に上位から下位に向かって伊平屋, 伊江, 本部ユニットの順に累重し, この順に付加年代が若くなる年代極性を示す.このような区分は, 西南日本秩父南帯の広域的なユニット区分にほぼ一致する.