抄録
北部琉球弧にある種子島の中部中新統茎永層群(16-10 Ma)の上部で見られる変形構造(メソスケールの正断層と引張節理)には北東-南西方向の伸張を示すものが卓越している.8地点における断層のずれから復元した応力テンソルでは, σV=σ1 (7地点)またはσ2 (1地点)であり, σ3軸はN5゜EからN73゜E(島弧に平行した伸張)であった.この北東-南東方向の伸張変形は東部九州や南部九州とは異なり, 種子島に限定されたものである.島弧直交型の伸張の欠如は中問主応力軸σ2と最小主応力軸σ3が入れ替わったことによるであろう.琉球弧の他地域(宮古島)と同様に, 応力配置のこの入れ替わりは海洋側に張り出した島弧の曲率増加に対応して局所的な島弧平行型ストレッチングが起こるとすれば容易に説明できる.