地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
汽水湖中海の環境変化に関する人為的工事の影響 : 有孔虫による証拠
野村 律夫瀬戸 浩二
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 108 巻 6 号 p. 394-408_1

詳細
抄録
人為的影響によってもたらされた有孔虫の生態変化は地球史における環境変化へのモダンアナログを提供する.そのために,多くの類似点を現在の中に求めることは地史事変の現在的検証として意義深い.本論文は,干拓事業のため閉鎖された中海の本庄工区内の有孔虫の消滅事変を検討した.有孔虫の消滅には次の3段階の変化が起こったことが確認された.(1)沿岸群集が汽水湖の閉鎖よって最大年数の3年以内に完全に消滅.(2)沿岸種の消滅後,典型的な汽水域の群集が7-10年間発達.(3)そして,完全な汽水群集の消滅.これら有孔虫群集の示す環境変化は,海水の流入とその影響を受けた湖水の塩分変化に対応している.すなわち,(1)海水の流入停止(閉鎖性水域の形成).(2)塩分躍層の発達.および(3)下層水の脱塩分化である.とくに,有孔虫の消滅には,最後の塩分躍層の消失とそれに伴う底質の酸化・擾乱が危機的であった.
著者関連情報
© 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top