2003 年 109 巻 12 号 p. 671-688
西九州海浦地域の黒瀬川構造帯に分布する砕屑岩層の層序,地質構造,地質年代に関する新知見から,井手鼻層(新称),京泊層(新称),坂本層(再定義)の3累層からなるジュラ系葦北層群を提案する.井手鼻層からは,Toarcian後期を示すアンモナイト化石Haugia cf. variabilisを見出した.京泊層,坂本層からは,Bajocian~Bathonian前期を示すTricolocapsa plicarum帯からTithonian前~中期を示すPseudodictyomitra primitiva帯を指示する放散虫化石を見出した.葦北層群は,転倒褶曲群やそれに伴う引きずり褶曲群の発達によって,正常層と逆転層がくり返す複雑な地質構造をなしている.従来これらの砕屑岩層の年代の根拠となっていたペルム紀紡錘虫化石や三畳紀軟体動物化石は,その産状が確認されるものについては二次化石であることが判明した.