地質学雑誌
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大磯丘陵の新第三紀堆積体発達史
伊藤 慎
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1986 年 92 巻 1 号 p. 47-64

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抄録

沖ノ山堆列の北西端が陸化した大磯丘陵には,引張応力場に支配されて発達した中期中新世および後期中新世の堆積体が認められる.
中部中新統高麗山層群は,陸源砕屑物を欠く深海平坦面堆積物である.東南東―西北西方向の引張応力場で少量のアルカリ―カンラン石玄武岩が海洋底に噴出した.海底火山からは多量の軽石流が海洋底に流出した.
上部中新統三浦層群は,陸源砕屑物の供給を受けた陸側斜面堆積物である.東―西方向の引張応力場で安山岩質小型海底火山が陸側斜面に形成された.北東―南西方向の正断層の活動に伴い,海底谷が海底火山の側方に発達した.正断層運動によって高麗山層群は地塊化した.海底谷は,北方から前進して来た海底扇状地堆積物によって埋積された.
三浦層群の堆積場は現在の沖ノ山堆列に類似性が認められる.従って,沖ノ山堆列は,後期中新世に陸側斜面に発達した正断層地塊が,埋積されずに残されたものと解釈される.

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