抄録
小断層群から応力場を推定する場合,すべての断層の面と擦痕の方向と変位のセンスを説明できる応力を,最小自乗的に推定する方法(逆解法)が世界的に使われている.この方法の解の妥当性を,本研究では簡単な計算機実験により検討した.全小断層が単一の応力状態のもとですべったのなら,それらから得られる断層スリップデータは均一であるといい,そうでなければ不均一であるというわけだが,本研究の結果,不均一な断層スリップデータからは,妥当な解が得にくいことがわかった.天然の小断層群は,多くの場合不均一である.このことはしたがって深刻な問題であり,この方法によって推定された応力場は,再検討の必要がある.その際には,不均一データを処理できる方法(例えば多重逆解法)でなければならない.