日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: T4-O-7
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T4(口頭)二次改変された過去の弧-海溝系の復元:日本およびその他の例
徳之島の地質構造とジルコンU-Pb-Hf同位体比が呈示する琉球弧と南中国の関連性
*山本 啓司岡本 和明上田 脩郎寺林 優
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抄録

琉球弧は九州南端と台湾の間に約 1200 km にわたって連なる島々からなる島弧である.琉球弧の地体構造は、専ら「本州弧の○○帯の延長がどこを通過するか」という観点からから検討されている。地理的に隣接する台湾や中国南東部を含めた議論はほとんどなされていない。日本に比べて台湾や中国の地質情報が不十分という問題があったかもしれないが、その差はなくなりつつある.

 徳之島は琉球弧中央のやや北東寄りに位置し,大きさは南北約26 km, 東西約14 km である. 徳之島の地質は,中川(1967),斎藤ほか (2009)などによる先行研究から要約すると,先古第三紀の堆積岩類,玄武岩質火山岩類,古第三紀の花崗岩質貫入岩類, およびそれらを不整合に覆う第四紀の礁性石灰岩と火砕堆積物から構成されていて, 島の中央部には超マフィック岩類を含むメランジが分布する.Ueda et al., (2017) は, 徳之島中央部の剥岳周辺の詳細な地質踏査と変形構造解析を行い, 斎藤ほか (2009)が「四万十付加体のメランジ」としている岩体が,泥質片岩,砂質片岩,閃緑岩質片麻岩,角閃岩, 超マフィック岩類から構成され,角閃岩相の低圧部に相当する温度圧力条件を経た変成ユニットであることを明らかにして,この変成ユニットの内部構造が北西に緩傾斜するホースからなるデュープレックスであることを提示した.Ueda et al., (2017) は,この変成ユニットの帰属の候補として本州弧の複数の低圧高温型変成帯を挙げているが,特定には至っていない.

 Yamamoto et al., (2020) は, Ueda et al., (2017) が記載した砂質片岩,閃緑岩質片麻岩,および島の北部に分布する花崗閃緑岩から分離したジルコンのU–Pb年代 とHf 同位体比を測定し,閃緑岩質片麻岩の2試料から2つのインターセプト上限年代 (1846 ± 27 Ma, 1814 ± 57 Ma) と,1つの 下限年代 (185.9 ± 5.6 Ma)を, 砂質片岩の1試料から1組の上限・下限年代 (2089 ± 18 Ma, 181 ± 15 Ma) を決定した.また,古原生代のジルコン測定スポットが正のεHf(t) 値 (+0.8 〜 +12.7) を示し,ジュラ紀の測定スポットが負の値 (-22.8, -19.6) であることから,古原生代に形成された地殻物質が前期ジュラ紀に変成作用を受けたと考えた.Isozaki et al. (2010)などは,南中国地塊に属するカタイシア (Cathaysia)の延長部が沖縄トラフおよび九州北部に達していることを提唱しているが,徳之島中央部の変成ユニットの年代はカタイシアで知られている地殻形成・改変のイベントと調和し,この見解を支持するものである.

 Yamamoto et al., (2020) によると,花崗閃緑岩の試料から抽出したジルコンの206Pb/238U 重み付平均年代は 61.3 ± 1.0 Ma で, εHf(t) 値 (+12.0, +12.6) は未成熟のマグマソースを示す.徳之島の花崗閃緑岩は,暁新世の中国南東部にあった火成活動帯に由来し,その北東延長が本州の山陰帯花崗岩類に相当すると考えられる.

引用文献

Isozaki et al., 2010, Gondwana Research, 18, 82–105.

中川久夫, 1967,東北大学地質古生物研究邦報, no. 63, 1-39.

斎藤眞ほか, 2009, 20万分の1地質図幅「徳之島」. 産総研.

Ueda et al., 2017, Island Arc, 26. e12199.

Yamamoto et al., 2020. International Geology Review, vol. 63, 1-16.

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