日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R5-O-2
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R5(口頭)地域地質・地域層序・年代層序
北部北上帯北東部大鳥ユニットの岩相・地質構造・付加年代
*武藤 俊伊藤 剛
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抄録

北部北上帯には,ジュラ紀に形成された付加体が広く分布しており,これは西南日本や極東ロシアのジュラ紀付加体と一連の海溝で形成されたものと考えられている(例えば永広ほか,2008).特に,岩相および構造層序の比較から,北部北上帯は西南日本の秩父帯南帯や極東ロシアのタウハ帯との関連が論じられている(大藤・佐々木,2003;高橋ほか,2016).一方で,北部北上帯のジュラ紀付加体は白亜紀花崗岩の貫入による変成作用により砕屑岩類の年代を決定するための放散虫化石の産出が著しく限定的になっていることもあり,付加体地質学的な研究は他地域と比較して遅れている.

本講演では,北部北上帯北東部の安家地域にて5万分の1地質図「門」作成の一環として行った,安家川上流域に分布する大鳥ユニット(大鳥層および大坂本層;杉本,1974)に関する研究の成果を報告する.大鳥ユニットは構造的下位を占めるチャートと珪質泥岩が構造的に繰り返す部分と,構造的上位を占める泥質混在岩からなることを明らかにした.チャートと珪質泥岩は複数回繰り返して構造的な累重関係にあり,わずかに泥岩や砂岩を伴う.泥質混在岩は主に数cmから数十cmの長径を持つ砂岩を含む泥質岩からなり,頻繁に数mにおよぶ長径を持つ砂岩を含む.また,泥質混在岩中には一部チャートや緑色岩が含まれている.一方,石灰岩は全く認めていない.

構造的下位に分布する珪質泥岩およびそれに含まれるマンガンノジュールから,中期ジュラ紀を示す放散虫化石を得た.中期ジュラ紀放散虫はチャートに構造的に挟在する珪質泥岩からも得られ,チャートと珪質泥岩がスラストにより繰り返していることを示す.泥質混在岩中の砂岩からは加重平均175.4±1.4 Ma,最若粒子170.9±3.8 Maの砕屑性ジルコンU–Pb年代が得られ,放散虫により示唆される中期ジュラ紀の付加年代と整合的である.また,過去に報告された珪質泥岩中のマンガンノジュールから産出した放散虫化石年代とも整合的である(鈴木ほか,2007).

従来,大鳥ユニットは下位の層状チャートと上位の泥岩からなる整然相の付加体であると記されていた(高橋ほか,2016).しかし,本研究では,構造的下位のチャート・珪質泥岩はスラストによる構造的繰り返しを,構造的上位の泥質岩はチャートや緑色岩などの海洋性岩石をも取り込む混在化を経験していることが明らかになった.

文献

永広昌之 ほか(2008)地質学雑誌114補遺,121–139.

大藤茂・佐々木みぎわ(2003)地学雑誌112,406–410.

杉本幹博(1974)東北大学地質古生物研邦報74,1–48.

鈴木紀毅ほか(2007)地質学雑誌113,274–277.

高橋聡 ほか(2016)地質学雑誌122,1–22.

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