日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R13-O-2
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R13(口頭)沈み込み帯・陸上付加体
固結砂岩中における粒子溶解を伴う流体移動
*宮原 拓己坂口 有人
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抄録

《研究背景》

 海溝型タービダイトは炭酸塩補償深度よりも深く到達することから堆積時に炭酸塩鉱物はほとんど含まれない。固結した後の鉱物脈としてのみ炭酸塩鉱物は観察されてきた。しかし白亜系付加体タービダイト相の四国四万十帯野々川層と下津井層において、数十㎝から1m程度の領域に炭酸塩鉱物が異常に濃集している「炭酸塩濃集スポット」が報告された(中川・坂口2016)。この斑状炭酸塩鉱物は、周囲の砂岩粒子である石英や長石の圧力溶解変形をオーバープリントしている点や斑状炭酸塩鉱物と周囲の粒子との関係から、砂岩粒子を溶解しながら進む新たな流体移動のモデルの産状として考えられた(中川・坂口2016)。先行研究では炭酸塩濃集スポットの中心部に注目して研究されたが、中心部には鉱物脈があるなど構成の影響が懸念される。そこで本研究では炭酸塩濃集スポット外縁部からサンプリングされた微細な炭酸塩鉱物について、濃集部形成初期の情報が残されていると考え調査を行った。

《地質概要》

 四国四万十帯は主にタービダイトが占め、本調査地域の白亜系下津井層、野々川層、中村層、砂岩優勢砂岩泥岩互層が主体で、砂岩層は石英や長石などの陸源砕屑物からなる。一般に珪質であり、鉱物脈を除けば有孔虫やナノ化石など石灰質微化石を含めて炭酸塩鉱物はごく少ない。

《結果と考察》

 希塩酸による中和反応から今回新たに中村層での炭酸塩濃集スポットの存在を確認した。こちらは10㎝程の大きさで先行研究に比べると小さい。炭酸塩濃集スポットの内部は珪酸塩の砂岩粒子が溶解しその間隙を炭酸塩鉱物が充填している様子が確認できる。これらの炭酸塩鉱物は微細なものが濃集しており中心部では大きく濃集している一方で外縁部に近づくほど濃集サイズは微細になっている。濃集した炭酸塩鉱物は極小で単一粒子としての観察が困難なものから数百μm程度の粒径で観察できるものもあり、これについては炭酸塩濃集スポット中心部にのみ観られ中心部の炭酸塩鉱物は再結晶した可能性がある。 また炭酸塩濃集スポットのない一般的な砂岩層についてもごく少量ながら斑状炭酸塩鉱物が観察されており、同様のメカニズムにより付加体砂岩中に普遍的に炭酸塩鉱物が存在している可能性がある。 この微細な斑状炭酸塩鉱物についてSEM-EDS分析を行った結果、微細な斑状炭酸塩鉱物には多くの場合においてSiが含まれることが分かった。Siの含有量についてはそれぞれ斑状炭酸塩鉱物によってばらつきがあり分布的な傾向は認められない。またこれらの斑状炭酸塩鉱物の試料からはFeやMgのピークはあまり得られず、斑状炭酸塩鉱物は基本的にカルサイトであるとみる。よって炭酸塩濃集スポットの砂岩粒子が溶解した産状と合わせて考えるとこのSiは流体が珪酸塩の砂岩粒子を溶解していたために混在していると考えることができる。

《引用文献》

中川美菜子・坂口有人,日本地質学会第123年大会,2016

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