日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R4-P-11
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R4(ポスター)変成岩とテクトニクス
中央構造線・桜樹屈曲部の三波川変成岩の地質構造
*崎 海斗遠藤 俊祐
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キーワード: 三波川変成岩, 桜樹屈曲
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抄録

はじめに

四国の中央構造線(MTL)は,西条市丹原町から東温市滑川にかけて南北走向・西傾斜を示し,桜樹屈曲と呼ばれている.桜樹屈曲を境にして,四国西部と四国中央部の三波川変成岩の構成要素には違いがみられる.すなわち,四国西部では構造的最上位に唐崎マイロナイト,四国中央部ではエクロジャイト相変成岩がみられる.桜樹屈曲の成因は明らかではないが,桜樹屈曲部の三波川変成岩の地質構造とは表裏一体の問題と考えられる.同地域の詳しい地質図は,Hara et al. (1992)により公表され,横臥褶曲を含む複雑な地質構造が提案されている.著者らは,MTLの活動に関係する脆性変形の観察を含め,桜樹屈曲部の地質構造を再検討する目的でマッピングを開始しており,予察的結果を報告する.

岩相層序と地質構造

構造は基本的には低角であり,構造的下位から泥質片岩層(無点紋),苦鉄質片岩卓越層(無点紋),珪質・苦鉄質・泥質片岩層(点紋あり)と累重し,またMTL沿いには上述の苦鉄質片岩卓越層(無点紋)の構造的上位に泥質片岩層が分布する.古典的層序区分でいえば,大部分は四国中央部の三縄層,MTL沿いの泥質片岩は大生院層に対比される.三縄層相当部の伸長線構造は桜樹屈曲部でも東西で,上盤西ずれの剪断センスを示す.また,石鎚層群の流紋岩と火山角礫岩(砕屑岩脈を含む)が三波川変成岩(大生院層)と和泉層群にまたがって分布し,これらは北落ち正断層に切られている.

変成作用

三縄層相当部はアルバイト斑状変晶(点紋)の出現から構造的上位に向かって変成度が上昇することが野外で認識できる.泥質片岩・苦鉄質片岩の鉱物組合せ・鉱物化学組成の観点からも,四国中央部の緑泥石帯とざくろ石帯の変成作用とは違いがみられない.ざくろ石帯は面木山山頂付近と,滑川左岸の山頂付近に分布する.一方,四国中央部の大生院層がざくろ石帯以上の高変成度を示すこととは異なり,桜樹屈曲部のMTL沿いの泥質片岩には,ざくろ石や点紋は見られず,変成度は緑泥石帯に相当する可能性が高い.

考察

桜樹屈曲部のMTL付近に見られる正断層は,石鎚層群の流紋岩を切っていることから,MTL活動ステージの石鎚時階の正断層運動と考えられる.四国中央部と四国西部での石鎚時階の正断層運動の変位量の差,すなわち三波川変成岩の上昇量の差が桜樹屈曲の形成に関与している可能性があり,さらなる検討が必要である.

引用文献

Hara et al. (1992) Jour. Sci. Hiroshima Univ. Ser. C, vol. 9, p. 495-595.

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