日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R5-P-14
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R5(ポスター)地域地質・地域層序・年代層序
プレート沈み込み方向の転換に伴う前弧海盆の応力の変化:上部中新統~下部鮮新統相良層群の例
*安邊 啓明佐藤 活志
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抄録

フィリピン海プレートの沈み込み方向は3~1 Ma頃に転換したとされている.静岡県中部にはこの時期の前後の前弧海盆堆積物が連続して分布している.この地域に働いた古応力の変化を明らかにすることで,プレートの沈み込み方向の転換に伴って前弧海盆に働く応力がどのように変化するかを明らかにすることができる.Yamaji et al. (2003) は上部鮮新統~下部更新統掛川層群の小断層を利用して古応力解析を行い,2 Maに圧縮場からトランステンション場へ変化したとしている.しかし2 Ma以前の地層の小断層データが少なく,この時期に応力場が変化したとする根拠としては不十分である.また,Hirono (1998) は上部中新統~下部鮮新統相良層群,掛川層群および下部~中部更新統小笠層群の小断層を解析し,3.5 Maに北北西―南南東圧縮応力から西北西―東南東圧縮応力に変化したとしている.しかし解析に用いた手法は,複数の異なる応力下で形成された小断層群を想定していないため,意味のない応力が検出される,または応力の時空間変化を検出できない可能性がある.そこで本研究では,静岡県中部の後期中新世~鮮新世の古応力を明らかにするため,相良層群において小断層を測定し,最新の手法を用いて古応力解析を行った.

相良層群には北東―南西方向の褶曲軸を持つ褶曲が多数発達している.本研究ではこれら褶曲のうち,相良層群分布域中部の向斜軸周辺と南部の褶曲群の周辺で小断層を測定した.各褶曲の両翼で地層は30~40°程度傾斜している.地層の傾動を補正すると最適応力の断層データへの適合度が小さくなることから,小断層は主に褶曲形成後に形成されたと考えられる.よって傾動補正を行わずに小断層を解析し,検出された応力を結果として用いる.中部では31条の小断層を測定し,北東―南西引張の正断層型・横ずれ断層型応力,および北西―南東引張の正断層型応力が検出された.南部では23条の小断層から,北西―南東圧縮の逆断層型応力および東西圧縮の逆断層型応力が検出された.

中部で検出された北西―南東引張の正断層型応力は,掛川層群に記録された2 Ma以降の応力 (Yamaji et al., 2003) と類似している.σHmax軸が北西―南東方向の応力は,中部と南部の両地域で検出された.これらの応力の型は地域間で異なっているものの,σHmax軸の方向は褶曲構造と整合的である.また,この応力は掛川層群の2 Ma以降の地層では検出されないことから,掛川地域では2 Maより前にσHmax軸の方向が北西―南東から北東―南西に変化したと考えられる.

参考文献

Hirono, 1998, The Journal of the Geological Society of Japan, 104, 137-142.

Yamaji, A., Sakai, T., Arai, K., Okamura, Y., 2003, Tectonophysics, 369, 103-120.

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