日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: G6-O-2
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G6(口頭). ジェネラル-サブセッション6 岩石・鉱物・火山
太古代超苦鉄質岩から産するジルコンの示す岩体変質履歴
*沢田 輝森下 知晃谷 健一郎
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抄録

ジルコンは主に花崗岩質岩に含まれる鉱物だが、かんらん岩やクロミタイトなどの超苦鉄質岩からも稀に産出し、その起源については様々な議論がある。太古代超苦鉄質岩は、コマチアイトなどの噴出岩を除くと、緑色岩体の構成岩石として存在するものと、片麻岩体中の数mから数kmスケールのブロックとして点在するものとに大別できる。多くの場合、角閃岩相~グラニュライト相程度の強い変成作用や花崗岩質岩貫入などの影響を受けている。このような太古代超苦鉄質岩に含まれるジルコンの起源を分類すると、(1)火成起源ジルコンが変成・変質に耐えて初生的組成を保持しているもの、(2)火成起源ジルコンが変成・変質したもの、(3)変成起源ジルコンがさらに変成・変質したもの、となる。(1)の例として、グリーンランド南西部の約3.7 Gaイスア緑色岩体苦鉄質マグマからの沈積かんらん岩中に産するジルコンがある[1]。(2)の例として、インドDharwar地塊Chithradurga縫合帯[2]やグリーンランド南西部Itsaq片麻岩体中のUjaragssuit Nunat岩体[3]が挙げられる。これらの超苦鉄質岩中で変成・変質を受けたジルコンは、周辺地質情報や微量元素組成からウラン鉛年代が変成イベントの年代を示すと解釈される一方で、一部のジルコン粒子のHfモデル年代は火成イベントの時期を示す。(1)、(2)共に、超苦鉄質岩中の火成起源ジルコンは、約2.05 Ga Bushveld層状貫入岩体で見られるように沈積岩形成過程で分化の進んだメルトの影響で晶出したものであると考えられる[4]。一方で、(3)はZrを含む鉱物が変成によって分解して生じるジルコンであり、グリーンランド東海岸Rae地塊東端Ivnartivaq岩体に産する蛇紋岩の脱水で生じた変成かんらん岩中のジルコンが挙げられる[5]。超苦鉄質岩中ジルコンは火成起源であっても波動累帯構造が明瞭でないことも多く、(1)~(3)を区別するにはウラン鉛年代測定だけでなく、産状や微量元素組成、酸素・Hf同位体比等から総合的に判断する必要がある。太古代超苦鉄質岩中ジルコンは特にウラン鉛年代が変成イベントによってリセットされてしまうことが多い点は特筆される。蛇紋岩化作用に伴ってロディン岩やヒスイ輝石岩などに熱水ジルコンが生じることから類推すると、ジルコンは超苦鉄質岩中では珪長質岩中よりも変成・変質に弱い可能性がある。このことは、超苦鉄質岩中ジルコンは火成活動やマントル進化の解読に使うには不利であるが、変質履歴の解読には有用であることを示唆する。

参考文献

[1] D'Andres et al. (2019). Geochimica et Cosmochimica Acta, 262, 31-59.

[2] Santosh et al. (2020). Lithos, 376, 105772.

[3] Sawada et al. in prep.

[4] Yudovskaya et al. (2013). Mineralogy and Petrology, 107, 915-942.

[5] Peters et al. (2020). Earth and Planetary Science Letters, 544, 116331.

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