日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: T1-O-24
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T1(口頭).変成岩とテクトニクス
隠岐島後における低圧ザクロ石角閃岩の変成履歴
*髙橋 瑞季遠藤 俊祐
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抄録

島根県隠岐島後に分布する隠岐変成岩は,近年の年代学的研究(Cho et al., 2021; Kawabata et al. 2022)から古原生代造山帯の一部であったと考えられる.隠岐変成岩の砂泥質片麻岩中には苦鉄質グラニュライトや角閃岩といった苦鉄質変成岩がレンズ状に含まれる(Hoshino, 1979).本発表では,苦鉄質グラニュライトおよび新たに見出したザクロ石を含む角閃岩の岩石学的解析により,ザクロ石形成反応を特定し,変成履歴を検討する.苦鉄質グラニュライトの両輝石の平衡温度はHoshino(1979)と同様に,800℃以上を示す.苦鉄質変成岩の基質を構成するCa角閃石はTi鉱物と共生し,岩種に関わらず褐色のコア(Hbl)と淡青色のリム(Ts)からなる累帯構造をもつ.TiO2に富む褐色のコアは,Ti-in-Ca角閃石温度計により800℃以上を示したことからグラニュライト相ステージとみなせる.ザクロ石は自形のものと苦鉄質鉱物(Fe-Mg角閃石仮像)と斜長石の粒界にコロナ様に生じるものが観察され,Fe-Mg角閃石やCa斜長石を包有する.この反応組織とFe+Mg+Mn:Ca=2:1に近いほぼ均質なザクロ石の組成から,次のザクロ石形成反応が特定できる.

Fe-Mg角閃石+斜長石=ザクロ石+石英+H2O

実際に,ザクロ石を含む角閃岩の全岩化学組成を用いてシュードセクションを計算したところ,この反応が角閃岩相でのザクロ石初出線となることが確認された.この反応は,右辺が高圧で,530-750℃の温度範囲で0.55-0.65GPaの圧力範囲を示すゆるい正の傾きをもつ不連続反応であることから,この苦鉄質変成岩中ではグラニュライト相から角閃岩相にかけて低圧(低P/T)かつ等圧冷却に近いP-T経路(後退変成作用)を経てザクロ石が形成されたと考えられる.北中国地塊東部の古原生代造山帯であるJiao-Liao-Ji beltでは,同様な後退変成時のP-T経路が報告されているが,それ以前の履歴において,藍晶石安定領域からの等温減圧(時計回り)を示すタイプと,低P/Tの昇温(反時計回り)を示すタイプが報告されている(Zou et al. 2018).隠岐変成岩からは中圧型(藍晶石安定領域)の変成条件を示すような直接的な証拠は見つかっていないが,隠岐変成岩の形成テクトニクスを議論するためには,後退変成以前の履歴を解明する必要がある.

引用文献:Cho et al. (2021) Lithos 396-397, 106217; Kawabata et al. (2022) J. Metamor. Geol. 40, 257-286; Hoshino (1979) J. Japan. Assoc. Min. Petr. Econ. Geol. 74, 87-99; Zou et al. (2018) Precambr. Res. 311, 74-97.

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© 2022 日本地質学会
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