日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T7-O-12
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T7.鉱物資源研究の最前線
(エントリー)Re-Os年代測定法に基づく兵庫県明延鉱床における鉱化時期の検討
★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*小笠原 光基大田 隼一郎石田 美月中村 謙太郎安川 和孝藤永 公一郎加藤 泰浩
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抄録

兵庫県の但馬地域に存在する明延鉱床は多金属鉱脈型鉱床として知られ、かつては錫をはじめ、銅、鉛、亜鉛を対象に採掘されていた。これらの他にも、脱炭素社会を実現するうえで重要なタングステンやビスマス、インジウムなど多様なレアメタルを含む鉱物を産出した、日本でも有数の金属鉱山である。このように多様な金属が濃集する鉱床の成因を制約するうえで、鉱床の形成年代は非常に重要な条件となる。年代情報を明らかにすることで、例えば鉱化作用に関与した火成活動の推定が可能となり、起源マグマの特徴と濃集した金属の関連性を議論できるようになることが期待される。 明延鉱床は西南日本内帯の舞鶴帯に分布しており、粘板岩や塩基性凝灰岩および塩基性溶岩からなる舞鶴層群中に胚胎している。周辺には和田山花崗岩 (チタン鉄鉱系) や、沖ノ山花崗岩 (磁鉄鉱系) など複数種類の花崗岩体が貫入している。明延鉱床を構成する鉱脈は、産出鉱物や産状に基づく前後関係から、前期の銅-亜鉛 (Cu-Zn) 脈と後期の錫-タングステン (Sn-W) 脈に大別される [1]。先行研究によって、それぞれの鉱脈が形成された時期はCu-Zn脈が66〜63 Ma 、 Sn-W脈が59〜54 Ma [2]と推定されている。しかしながら、これらの年代値は周辺鉱床の形成年代や、鉱脈の形成と前後関係にある岩脈の年代から推定されたものであり、明延鉱床の鉱石に対する直接的な年代決定は行われていない。多金属鉱床である明延鉱床における金属濃集プロセスを理解するためには、鉱脈から直接得られた形成年代が重要な鍵になると考えられる。 本研究では、鉱脈の形成年代を直接決定するため、明延鉱床の智恵門鉱脈群の鉱石試料を対象に、レニウム(Re)-オスミウム(Os)放射年代測定を実施した。顕微鏡観察、SEM-EDSによって鉱石試料をCu-Zn脈とSn-W脈のそれぞれに分類したのち、 ReとOsの分布を調べるために、千葉工業大学次世代海洋資源研究センターのレーザーアブレーション システムとマルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析装置を用いてRe-Os元素マッピングを行った。その後、ReとOsの明瞭なシグナルを検出したCu-Zn脈とSn-W脈の鉱石試料に対してRe-Os同位体測定を実施し、明延鉱床の年代値を求めた。本発表では、得られたRe-Os放射年代から推定される、明延鉱床に多様な金属を濃集させる要因となった火成活動について議論を行う。 [1]. 伊藤 和男, 高階 和郎, 杉山 輝芳, (1985), 明延鉱山智恵門脈群の下部探鉱とその成果について. 鉱山地質, 35, 119-132 p. [2]. MITI, (1988), 広域地質調査報告書:播但地域–昭和62年度, 178 p.

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