日本地質学会学術大会講演要旨
Online ISSN : 2187-6665
Print ISSN : 1348-3935
ISSN-L : 1348-3935
第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T9-O-2
会議情報

T9.マグマソースからマグマ供給システムまで
西南日本のフレアアップにおける火山岩と深成岩の同時性
*中島 隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

フレアアップでは多くの地域で火山深成岩帯として観察されるが、大規模なものでは現在の地表でその地点の火山深成活動の累積結果を観察することになり、地表地質や年代学的分解能の限界から個々の火山深成岩複合体を判別することが難しいことが多い。しかし近年ジルコンU-Pb年代測定の技術がめざましく進歩し、その地質学的分解能が大幅に向上したことにより、フレアアップの実態がある程度描述できる部分も見えてきた。本発表ではそのような例を紹介する。 西南日本では2回のフレアアップが知られている。中期中新世の外帯花崗岩区と白亜紀〜古第三紀の領家山陽山陰帯花崗岩区の活動である。 中新世外帯花崗岩のフレアアップは西南日本全域にわたる同時多発的な活動で、そのすべてが13.5-15.5Maという非常に短期間に発生し終了している(Shinjoe et al., 2019)。花崗岩類の産状はバソリス、ストック、火山深成岩複合体と多様であるが、いずれも浅所貫入と考えられている。火山深成岩複合体を構成する珪長質火山岩類の多くはカルデラフィル、花崗岩体はリサージャントのマグマ貫入と見られるので、火山岩と深成岩の形成は一連とみなされ、火山岩のU-Pb 年代はまだあまり報告例が多くないものの深成岩とほとんど差がないと推定できる。 一方、白亜紀〜古第三紀のフレアアップは中新世のそれに比べると生産された火山岩と深成岩の地表露出量が格段に大きく、それらの年代もかなり範囲が広くて活動史の詳細が分かりにくい。しかし近年、U-Pb年代測定が高精度で行なわれるようになり、火山岩と花崗岩類の活動の同時性が検討できるようになった。 中部地方三河地域では領家花崗岩類のU-Pb年代がほぼ70-75Maと90-95Maの2つの時期に集約された(Takatsuka et al., 2018)。この2つの活動ステージは近接地域の同時性岩脈のジルコンに記録された94Maと71Maの成長年代(中島ほか, 2021)によっても支持され、これらによって白亜紀フレアアップのパルス的性格が明らかになった。 また、近接する見かけ層厚5000m(山田ほか, 2005)に及ぶ濃飛流紋岩は、最近ジルコンU-Pb年代がその火成層序の下位から上位まで70-72Maと報告され(星ほか, 2016)、極めて短期集中の活動であったことが明らかになったと同時に70-75Maの活動パルスにおける噴出岩相として花崗岩との同時性が示された。しかし90-95Maのパルスに対応する珪長質火山岩類は同地域から確認されておらず、今後の研究が待たれる。 一方、中国地方の広島県地域でも、この地域内での見かけ層厚3000mの高田流紋岩が下位から上位まで91-96MaのジルコンU-Pb年代が報告され(早坂・田島, 2016)、これも短期集中型の活動であったことが明らかになった。また、近隣の広島花崗岩類を代表するU-Pb年代として、ジルコンおよび閃ウラン鉱年代 約93Ma(中島・折橋, 2009; Yokoyama et al., 2016)が報告されており、高田流紋岩との同時性が示された。 活動時期が白亜紀に限られる領家山陽帯に比べて山陰帯には白亜紀から古第三紀にわたる花崗岩類と珪長質火山岩が存在する。特に古第三紀の活動は、白亜紀末期から連続する67-60Maとそれより若い48-33Maの活動期の間に約10Myrの活動休止期が見られ(Iida et al., 2015)、休止期後の活動は60Maまでとは異なる化学的な性質や多数のコールドロンの形成などの特徴が報告されており(Imaoka et al., 2011)、活動場のテクトニクスが変化して新たな活動パルスを生じた可能性が高い。ただし山陰帯では火山岩のU-Pb年代がまだ少ないため、花崗岩類との活動の同時性については検討できていない。 文献 早坂康隆・田島詩織 (2016) 地質学会123年大会講演要旨, 61. 星 博幸ほか (2016) 地質学会123年大会講演要旨, 81. Iida, K. et al. (2015) Isl. Arc, 24, 205-220. Imaoka, T. et al. (2011) J. Asian Earth Sci., 40, 509-533. 中島 隆ほか (2021) 地質雑 127, 69-78. 中島 隆・折橋裕二 (2009) 地質学会116年大会講演要旨 22. Shinjoe, H. et al. (2019) Geol. Mag. https:// doi.org/10.1017/S0016756819000785 Takatsuka, K. et al. (2018) Lithos 308-309, 428-445. 山田直利ほか (2005) 地団研専報 no.53, 29-59. Yokoyama K. et al. (2016) Mem. Nat’l Museum Nat.& Sci., no.51, 1-24

著者関連情報
© 2023 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top