日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T11-O-7
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T11.南極研究の最前線
東南極,セール・ロンダーネ山地の岩石学から見る下部地殻での流体移動現象の解明と地震研究への展開
*土屋 範芳Mindaleva Diana宇野 正起奈良 拓実
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抄録

JARE-25の予備偵察以降,東南極セール・ロンダーネ山地は,地学,生物,隕石等の地球科学研究の拠点地域として,多くの隊次で調査が進められてきた.これらの成果として,セール・ロンダーネ山地の地質図の刊行がされ,地域地質研究はもとより,ゴンドナワナ大陸の成長モデルの提案など地質学的研究の展開に大きく貢献してきた.さらに,我々の研究グループでは,セール・ロンダーネ山地の下部地殻高度変成岩の,特に加水反応組織の解析から,下部地殻環境下における流体移動の解析を行ってきている. Uno et al.(2017)は超苦鉄質岩に貫入する花崗岩質マグマからの流体の放出により,貫入部周辺に加水反応体が形成され,その流体の固定量と花崗岩質岩脈からの放出量とのバランスから地殻中に放出される過剰な流体量を見積もっている. Mindaleva et al.(2020)では,セール・ロンダーネ山地の中央部のメーフェル岩体での岩脈とその周辺の反応隊の解析から,流体圧,流体の移動様式,流体(および貫入岩脈)の活動時間の制約を進め,母岩の浸透率は極めて低く(10^-20~10^-22 m^2),一方,き裂の浸透率は(10^-10~10^-16 m^2)で,下部地殻での流体移動は主としてき裂が担っていること,さらにき裂からの流体移動形式をPやClの挙動から明らかにしている.この研究により,流体圧の推定方法が示されている.またMindaleva et al.(2023)では,流体圧に加えて,流体量およびその活動時間の見積もりを行って,流体移動形式が,地震発生のメカニズムとよく一致していることを見出している.これらの研究成果は,現在の地殻で生じているさまざまな地震現象のある種のナチュラルアナログであり,地震発生の化石の地質学的に証拠として解析していることを意味している.さらに,同じくセール・ロンダーネ山地の中央部のブラットニーパネでのマグマ貫入の応力解析から,下部地殻での火山性深部低周波地震との関係を解析する試みが進められている.本発表では,セール・ロンダーネ山地の地域地質学の展開に加えて,岩石学,移動現象論的解析,応力解析などさまざまな手法を適用して,下部地殻での流体移動とその結果の地震等の地球科学現象の解明に関する研究の展開について紹介する.Uno, M. , Okamoto, A., Tsuchiya, N. (2017), Excess water generation during reaction-inducing intrusion of granitic melts into ultramafic rocks at crustal P–T conditions in the Sør Rondane Mountains of East Antarctica, Lithos, 284–285, 625–641, doi.org/10.1016/j.lithos.2017.04.016 Mindaleva, D., Uno, M., Higashino, F., Nagaya, T., Okamoto, A., and Tsuhciya, N. (2020), Rapid fluid infiltration and permeability enhancement during middle–lower crustal fracturing: Evidence from amphibolite–granulite-facies fluid–rock reaction zones, Sør Rondane Mountains, East Antarctica, Lithos,372–373, doi.org/10.1016/j.lithos.2020.105521Mindaleva, D., Uno, M., and Tsuchiya, N. (2023), Short-Lived and Voluminous Fluid-Flow in a Single Fracture Related to Seismic Events in the Middle Crust, Geophysical Research Letters, 50, doi.org/10.1029/2022GL099892

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© 2023 日本地質学会
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