主催: 一般社団法人日本地質学会
会議名: 第130年学術大会(2023京都)
回次: 130
開催地: 京都大学
開催日: 2023/09/17 - 2023/09/19
断層における岩石の変形機構は,深さ(温度・封圧)により異なる。浅部は低温であるため,地震を伴う脆性変形が卓越する。脆性変形領域では、せん断強度は Byerlee の法則に従い、深くなるほど封圧の増加により大きくなる。一方で,深部では温度が上昇することにより、地震を伴わない塑性変形が卓越する。塑性変形領域ではせん断強度は流動則に従い、温度が高いほど小さくなる。この変形機構の入れ替わりが脆性-塑性遷移である。脆性-塑性遷移が起こる深さ領域(脆性-塑性遷移領域)は脆性領域の下限部にあたり、せん断強度が高くなるため、しばしば巨大地震の震源となる。本研究では脆性-塑性遷移領域の条件下でせん断実験を行い、回収試料の微細構造から脆性変形によるせん断歪量と塑性変形によるせん断歪の割合の変化を見積もることを試みる。 せん断実験は Griggs 型固体圧式高温高圧三軸変形試験機(Griggs 型試験機)を用いて行い、試料には地殻内の断層や沈み込み帯プレート境界を想定し、大陸地殻および海洋堆積物の主要鉱物である石英の多結晶体を用いた。実験条件は封圧 1000 MPa、せん断歪速度 2.5*10-4 /s の一定条件にして、温度条件を石英の脆性-塑性遷移領域を含むとされる 400-1000 °Cの範囲 とした。実験中には力学データを測定し、回収した試料は薄片に加工し、画像解析プログラムを用いて解析した。画像解析では、粒子の長軸方向の角度、試料全体の歪量、R1面の角度を測定し、これらからNoda(2021)のモデルを用いて全体の歪に占める塑性変形による歪量の割合を算出した。 実験の結果、力学データでは400-700 ℃で摩擦則に従う脆性強度を,800 -1000 ℃で流動則に従う塑性強度を示し,脆性-塑性遷移領域は700-800℃であるように見受けられた。また、微細構造からの計算の結果、Noda(2021)のモデルで求められた塑性変形による歪量の割合は,高温領域では力学データと同程度の結果が得られた。しかし、低温領域では、微細構造からの計算では400℃でも塑性変形の割合が60%程度という力学データと矛盾した結果が得られた。このような結果になった原因としてNoda(2021)のモデルが長軸方向とアスペクト比の初期のばらつきを考慮してないこと、y面での滑りの寄与が大きいことがあげられる。本発表ではそれらについて吟味していく。