日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T5-P-7
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T5.テクトニクス
中央構造線掘削コア試料の活用
*坂口 有人
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抄録

中央構造線(MTL)は西南日本の外帯と内帯とを区分する主要な地質境界であるとともに、国内の内陸断層のなかでは平均変位速度が最も大きい活断層の一つである。 地質境界としてのMTLは、四国西部では三波川帯や領家帯の変成岩と、それらを覆う和泉層群や久万層群と接している。地表露頭では北に中角度で傾斜しており、そのまま地下深部まで連続して下部地殻まで切断するものと考えられている(Ito, et al., 2009)。 一方、活断層としてのMTLは、地質境界としてのMTLの北側に断続的に並走する。空中写真では尾根や谷地形を直線的に斜断するリニエーションとして認識され、垂直に近い高角断層の様相を示す。また、地表露頭でも垂直に近い高角断層であることが確認できる。そのため地質境界としてのMTLと、活断層としてのMTLは、地下で互いに斜交するものとして広く認識されてきた。 愛媛県西部の湯谷口には、地質境界としてのMTLの露頭があり、そのすぐ北側には活断層としての川上断層が並走している。この場所では両断層の地表でのみかけの距離はわずか100m程度以下であり、両者の関係を明らかにする適所である。この場所において、川上断層と地質境界としてのMTLの両者を貫く掘削調査が原子力規制庁によって行われた。断層を貫くかたちで、垂直および傾斜掘削が行われ、長さ80mから330mまでの5本のボーリングコア試料が採取された。その結果、地質境界としてのMTLは、地表から深部まで北に約30度で傾斜するのに対して、川上断層は地表付近では北に70度で傾斜しているものの、深くなるに連れて傾斜がゆるくなり、地下140m付近で地質境界としてのMTLに収束することが確認された(Miyawaki and Sakaguchi, 2021)。これは西南日本の島弧の大構造を検討する上で重要な成果である。 この調査に用いられた掘削コア試料として、地質境界としてのMTLのみを貫いたものが1本、地質境界としてのMTLと川上断層の両方を貫いたものが3本、両断層が収束した部分を貫いたもの1本がある。それぞれのコア試料は断層中心部を含めて、きわめて高い採取率で得られている。これらのコア試料は学術的にきわめて貴重なものであり、より多くの研究者によって詳細な分析に活用されることが望ましい。 コア試料の主要部分は山口大学に移送され、内外の研究者に広く公開する予定である。試料断層中心部など重要区間は、その一部はアーカイブとして保存されるが、断層中心部を含む残りの部分は分析希望者に配布する計画である。

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© 2023 日本地質学会
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