日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T6-P-1
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T6.堆積地質学の最新研究
流れの速度変化に関連した水中土石流堆積物中の砂礫の分布
*正田 陽宏金﨑 勇斗清里 弘志湯浅 紀之横川 美和
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抄録

地層の水中重力流の堆積物では水中土石流から混濁流へと変化する過程で堆積したと考えられるさまざまなパターンの堆積構造が報告されており,流れの挙動とそれがどのように地層へと反映されるのかについて,多くの議論がある.Yokokawa & Yuasa (2023)では,含泥率の高い材料にさらに礫を加えて水中に流し込み,流れの挙動を調べる実験を行った.その結果,礫を少量(5wt%)加えただけで,流れの性質が変化し,流れが途中で加速する現象が起こることがわかった.このような流れの違いが堆積物にはどのように反映されるのか,本研究では,流れが流下した後に残った堆積物中の砂礫の分布を測定した. 実験はIlstad et al. (2004)の実験条件の一つ,水35wt%,粘土32.5wt%,砂32.5%をレファレンスとした.長さ760cm, 幅30cm,高さ120cmの深型堆積用水路に水を張り,その中に長さ700cm, 幅8cm, 高さ50cmのアクリル製の水路を設置した.アクリル製水路の傾斜はIlstad et al.(2004)と同じ6°に設定した.実験に使用した材料は,粘土はカオリンクレー(平均粒径0.4μm),砂は6号硅砂(平均粒径330μm),礫は市販の天然大磯石(3-5mm)である.実験条件はいずれも水35wt%,粘土32.5wt%であり,残る32.5wt%について礫を0wt%,5wt%,15wt%と変化させて,残りを砂にした.上記の材料を攪拌機でよく攪拌し,上流端から供給した.その結果,礫が入ると途中で流れの加速が起こり,7mを流下する時間が大幅に短縮した(礫0%では21秒,5%では15秒,15%では16秒).また,流下後の堆積物の分布も礫の有無によって異なり,礫がある場合はより上流側で堆積した. 水路底に堆積した堆積物の表面直下(表面は ”hemiperagic” な細粒堆積物に覆われるので,その下に分布する分布する流れが流下する過程で堆積したと考えられる部分の最上部)と底面付近の堆積物を採取し,含まれる砂礫の量を測定した.その結果,礫0%では,底面付近より表面直下の方に砂が多く含まれていた.このことは,礫が入らない場合には,栓流構造がより顕著に発達し,砂の沈降が妨げられるような状態で流下・堆積した,すなわち,流れの加速などが起こりにくい状態であったことを示唆すると考えられる.礫を含むケースはいずれも,礫は底面付近により多く堆積している.逆に,砂の比率は,いずれも表面直下付近が多くなっている.したがって,今回の条件では,直径3-5 mmの礫程度の沈降速度を持つ堆積物は沈降できるが,6号砂(平均粒径330μm)の沈降速度では,沈降しきれない状態が続いていると考えられる.また,礫の堆積は流下距離400cm辺りから急に減少するが,この地点は流れの加速が終わり減速に転じるところとほぼ対応している.したがって,流れの中での礫の沈降が流れの加速と関連する可能性が示唆される.引用文献:Ilstad, T. et al., 2004, Marine Geology, 213, 415-438. Yokokawa, M. and Yuasa, N., 2023,Abstract of JpGU2023, H-CG20-O04.

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© 2023 日本地質学会
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