日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T6-P-23
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T6.堆積地質学の最新研究
(エントリー)モンゴル西部ゴビ・アルタイ県のカンブリア系下部Bayan Gol層(Cambrian Terreneuvian)から産する樹状オンコイドの特徴と形成様式
★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*上村 葵足立 奈津子江﨑 洋一劉 建波渡部 真人Gundsambuu ALTANSHAGAIBatkhuyag ENKHBAATARDorj DORJNAMJAA
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抄録

オンコイドとは,生砕物などを核として,その周りに同心円状ラミナが発達する球状炭酸塩粒子のことである.ラミナの発達する被覆部は,微生物活動に起因する粒子のトラップや炭酸カルシウムの沈殿によって形成される.オンコイドは,先カンブリア時代から知られているが,カンブリア紀以降のオンコイドは,多様な石灰質微生物類を含むものがあり,微生物類がオンコイドの形成に果たした役割を解明する上で重要である.モンゴル西部ゴビ・アルタイ県に分布するBayan Gol層(カンブリア系テレヌーブ統)には,層厚約8mのオンコイド層が産出する.そこから分離した個々のオンコイドの被覆部は,層状,波状,斑点状,樹状を示す.本研究は,一般的なオンコイドとは異なり特異な樹状組織が顕著なオンコイドに注目し,その特徴と形成様式を検討する.樹状組織が顕著なオンコイド(樹状タイプ,総数10個)は,平均長径が61.6 mm,平均短径が49.2 mmで,長径/短径比が1.25で球に近い外形を示す.他の組織を持つタイプ(合計74個)の平均長径は52.0 mm,平均短径は36.6 mmで,樹状タイプは大きい.オンコイドの核は多くの場合不明瞭である.樹状組織は,外部へ凸状のラミナが累積した柱状構造を持ち,それは,核の周囲から放射状に発達する.また,一部では,ラミナが側方に広がり,柱状構造が連結し,ストロマトライトにおける “柱状-層状組織”に類似するラミナの累積様式を示す.さらに,柱状構造はしばしば分岐する.柱状構造間は,ぺロイド状粒子や石英粒子により充填される.柱状構造の内部には,上方に伸長するフィラメント状石灰質微生物類が存在する.柱状構造間を連結するラミナでは,柱状構造部とは異なるフィラメント状石灰質微生物類(Girvanella)が密集する.豊富なGirvanellaを含む明暗ラミナの累積が顕著な「層状組織」の周囲に「樹状組織」が発達する場合や,「樹状組織」の周囲に「層状組織」が発達するなど,被覆部内で組織が漸移的に移行する例も稀に認められる. 樹状タイプのオンコイドの形成過程は以下の通りである.(1)核表面で,フィラメント状微生物類が上方へ成長した.この過程で,凸状ラミナが累積する柱状構造が形成され,同時に柱状構造間にぺロイド状粒子や石英粒子が堆積した.(2)イベント時(堆積物の流入時等)には,フィラメント状微生物類の成長は抑制されたが,一方,Girvanellaが繁茂して側方に広がり柱状構造の間を連結するラミナを形成した.(3)抑制要因がなくなると,フィラメント状微生物類が再び上方に成長し柱状構造が形成された.(4)1から3を繰り返しつつ,樹状タイプのオンコイドは,水流などの影響で転がり,微生物類の成長箇所は次々に変化するため,その過程で核表面を覆って形成された組織は全方向に発達した.さらに,樹状タイプは,他のタイプのオンコイドとは異なりウーイドをほとんど含まず石英粒子を含むという特徴を持つ.このため,樹状タイプのオンコイドは,陸源性砕屑物が流入する環境で形成されたと推定できる.

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© 2023 日本地質学会
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