日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T13-P-13
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T13.沈み込み帯・陸上付加体
日本海溝北部アウターライズから陸側斜面にかけての反射法地震探査
*中村 恭之野 徹雄三浦 亮藤江 剛三浦 誠一小平 秀一鶴 哲郎朴 進午
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抄録

2011年東北地震は北緯37.5度から北緯39度付近の、日本海溝域の中部にあたる箇所を破壊域とする地震であった。JAMSTECでは東北地震震源域のプレート境界断層や上盤プレートの構造を調べるために、地震発生直後から「かいれい」を用いた反射法調査を実施し、この海域にはP波速度が遅い前縁プリズムが海溝陸側下部斜面下に存在することなどを明らかにした(Kodaira et al. 2017)。一方、東北地震震源域の北隣にあたる日本海溝北部域は、近年の海底観測網の整備により微動や超低周波地震活動が報告されるようになり(たとえば、Nishikawa et al. 2023)、東北地震震源域とは異なった断層滑りが進行していることを示唆している。また、 この海域の陸側斜面海溝軸近傍は明治三陸地震、沈み込む前の太平プレート上は昭和三陸地震の震源・津波波源域とされている。近年の研究からは、沈み込むプレート上の堆積層厚さや折れ曲がり断層の発達様式が日本海溝中部と北部では異なっていることも示唆されている(Nakamura et al. in revision)。海溝軸近傍の太平洋プレート上に見られるプチスポット域が東北地震浅部滑り域の北端に位置することから、プチスポット活動とプレート境界断層での滑り現象の関連も指摘されている(Fujie et al. 2020)。これまでに日本海溝北部域では地下構造調査が実施されてきたが(たとえば、Tsuru et al. 2000)、測線間隔はおよそ50 – 100 km であり、ゆっくり地震との関連を議論するには不十分であった。さらに、陸側斜面に関しては主に2003年までに約4kmのケーブルで得られたデータであり、沈み込み帯深部やアウターライズ断層深部を対象とするにはさらによい観測仕様でのデータ取得が望まれる状況であった。そこで我々は、2022年(KM22-07航海)・2023年(KM23-07航海)の2年にわたって日本海溝北部域で、「かいめい」を用いた反射法地震探査を実施した。用いたケーブル長は5.5 – 6 km、エアガン容量は10600立法インチである。得られた断面上には、陸側斜面下に沈み込む太平洋プレートの上面が海溝軸から100km以上にわたって追跡できる。上盤側プレート内の構造は測線によって変化している様子や、プチスポット域付近ではモホ面が不明瞭であることなども見て取れる。本発表では、この2年で得られた断面に見られる構造の特徴を紹介し、ゆっくり地震活動や巨大地震震源域と構造の関係を議論する。引用文献S. Kodaira et al. (2017) Geosphere, 13 T. Nishikawa et al. (2023) Progress in Earth and Planetary Science, 10Y. Nakamura et al. Progress in Earth and Planetary Science, in revision G. Fujie et al. (2020) Geology, 48T. Tsuru et al. (2000) Journal of Geophysical Research, 105

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© 2023 日本地質学会
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