日本地質学会学術大会講演要旨
Online ISSN : 2187-6665
Print ISSN : 1348-3935
ISSN-L : 1348-3935
第131年学術大会(2024山形)
セッションID: T13-O-10
会議情報

T13.堆積地質学の最新研究
[招待講演]エネルギー資源開発部門をもつ化学会社の堆積盆探鉱とCCSの取り組み
*持永 竜郎
著者情報
キーワード: 油ガス探鉱, CCS
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

三菱ガス化学の前身である日本瓦斯化学工業は戦時中に液体燃料の製造・研究をしていた旧海軍出身で地質学の学位をもつ技術者によって1951年に設立された.翌1952年,水溶性天然ガスが豊富に賦存している新潟県において日本で初めて天然ガスを出発原料としたメタノールの生産を始めた.その後,さらに多くの天然ガスを求めて新潟県の陸海域の鉱業権を取得,化学会社ながら自ら探鉱を開始.探鉱リスクを負って,東新潟,新胎内,岩船沖の3つの油ガス田を発見し,現在も化学工場に天然ガスを供給している.油ガス探鉱と技術的に親和性のある地熱開発には1980年代から参画し,現在では澄川(秋田県),山葵沢(秋田県),安比(岩手県)の3つの発電所を共同操業している.同じく技術的に親和性のあるCCS(CO2の地下貯留)には2008年より初期検討から参画してきた.また電力事業にも注力しており,LNG火力発電やバイオマス発電も共同操業している.CCSと再生可能エネルギー,メタノール合成の要素技術である水素製造の知見を持つことからブルー水素,グリーン水素の事業化検討も行っている.これらの事業の開発から運営までを化学会社の中の一つの部署で行っている.

堆積盆探鉱については,国内は東新潟の浅部においてオペレーターとして探鉱開発,操業を行っている.現在は水溶性ガスのステップアウト開発を進めるべく段階を踏んだ取り組みを進めている.海外においては,いずれも過去の取り組みとなるが,1990年には豪州石炭層ガスの探鉱開発をオペレーターとして推進,その後,インドネシアの在来型探鉱,中国四川省のタイトサンドガス探鉱,カナダにおけるオイルサンド事業やシェールガスLNG事業にも参画してきた.

CCSについては東新潟の枯渇層を対象とした検討を進めている.東新潟油ガス田は,深層(主に椎谷層),中浅層(主に西山層),浅層(灰爪層以浅)に分かれ,それぞれ異なる検討を行っている.大規模かつ蓋然性の高い深層は先進的CCS事業の枠組みで共同検討,技術的課題のある浅層水溶性ガスは研究開発,比較的規模の小さい中浅層は民間主体で推進可能な事業化の模索を行っている.

著者関連情報
© 2024 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top