日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
訪問看護サービス利用者の身体計測指標と生命予後について―the Nagoya Longitudinal Study of Frail Elderly(NLS-FE)より
榎 裕美葛谷 雅文益田 雄一郎平川 仁尚岩田 充永井澤 幸子長谷川 潤井口 昭久
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2007 年 44 巻 2 号 p. 212-218

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抄録

目的 本研究は,介護保険サービスを使用し,訪問看護サービスを利用している在宅要介護高齢者を対象として,身体計測指標と生命予後との関連について検討することを目的とした.方法 名古屋市在住の高齢者を対象にした前向きコホート縦断研究(The Nagoya Longitudinal Study of Frail Elderly;NLS-FE)の参加者のうち,訪問看護サービスを利用し,身体計測のデータを得られた520名(男性219名,女性301名)を分析対象とした.研究開始時の基本的ADL,主要疾病,併存症(Charlson Comorbidity Index)などの患者背景を調査し,ならびに身長,体重,上腕周囲長(AC),上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)の測定からBody mass index(BMI),上腕筋面積(AMA)を算出した.平成15年12月から平成17年9月までの21カ月間の観察期間中における生存時間(単位:月)を算出し生命予後の指標とした.結果 21カ月の追跡期間中に,85名の死亡が認められた.性,年齢,基本的ADL, BMI, TSF, AMA, Charlson Comorbidity Indexの因子をCox比例ハザードモデル・ステップワイズ法に投入した結果,有意な予測因子としてBMIとTSFの因子が抽出され,BMIおよびTSFが低い高齢者ほど,死亡の相対リスクが高い結果を示した.さらにBMIとTSFを組み合わせた生存分析では,BMI, TSFの両者の低下に伴い,より高い死亡のリスクを予測できることが示唆された.結論 BMIとTSFは,要介護高齢者における死亡率の予測因子である.この2つの予測因子の組み合わせは,より高い死亡リスクを予測し得た.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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