抄録
目的 都市部に在住する高齢者における老年症候群を保有する者と保有しない者の様々な健康状態について詳細に比較することを目的とした.対象と方法 2002年に実施された老年症候群の早期発見・早期対応に関する包括的健診(「お達者健診」)に参加した1,784人(男性769人,女性1,015人)を分析対象とした.本研究で取り上げた老年症候群は,転倒,尿失禁,うつ,低栄養である.転倒は,「過去一年間に転倒あり」の者,尿失禁は「過去一年間に尿失禁があり」の者,低栄養は「血清アルブミン値が3.8g/dl以下」の者,うつはMini International Neuropsychiatric Interview;MINIにより「うつ傾向あり」に該当の者とし,どれか一つ以上に該当する場合を老年症候群「あり」とした.分析は男女別に行い,老年症候群の「あり」と「なし」の二群間における健康状態や身体機能を比較した.検定は,連続量については年齢を調整した共分散分析,離散量については年齢を調整したCochran Mantel-haenszel testを用いた.また,老年症候群の有無に対する各健康関連特性の影響については多重ロジスティック回帰分析を行った.結果 転倒,尿失禁,うつ,低栄養のうちどれか一つ以上に該当する老年症候群「あり」の割合は,男性で33.6%,女性で42.4%と女性で高かった.男女ともに老年症候群の「あり」群では「なし」群に比べ,健康度自己評価が低く,転倒恐怖感が高く,老研式活動能力指標の得点が低く,握力や通常および最大歩行速度などの身体機能が低かった.多重ロジスティック回帰分析の結果,男性では健康度自己評価が悪い,血色素量が低い,通常歩行速度が遅いことが,女性では健康度自己評価が悪い,転倒恐怖感があることが老年症候群を持つことと強く関連した.結論 老年症候群(転倒,尿失禁,うつ,低栄養の4つの症候)を有する者は老年症候群がない者に比べ,健康度自己評価が低く,転倒恐怖感が高く,高次生活機能が低く,握力および歩行速度といった身体機能が低いことが明らかになった.