日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住虚弱高齢者のビタミンD濃度の分布状況とビタミンD濃度と生活機能·身体機能との関連
奥野 純子戸村 成男柳 久子
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2007 年 44 巻 5 号 p. 634-640

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抄録

目的:虚弱高齢者は,下肢機能の低下が特徴的で,介護を要する疾患として転倒·骨折が多い.血清ビタミンD濃度は筋力低下や転倒と関連があると報告されているが,日本における虚弱高齢者の血清ビタミンD濃度の分布状況やビタミンD濃度と生活機能,身体機能との関連についてはほとんど知られていない.そこで,虚弱高齢者を対象に血清ビタミンD濃度として血清25-hydroxyvitamin D[以下25(OH)D]を用い,その分布状況と,25(OH)D濃度と生活機能や身体機能との関連を検討することを目的とした.方法:平成17年6月から平成18年9月までに,介護予防教室に参加した茨城県八千代町(北緯36度)に在住の65歳以上の虚弱高齢者76名を対象とした横断研究である.対象者には質問紙による面接調査と体力測定,血液検査を行った.25(OH)D濃度が50nmol/L以上と未満で生活機能·身体機能等を比較検討した.結果:52.6%は転倒を経験,75.0%はふらつき·つまずきを経験しており,約20%が閉じこもり高齢者であった.平均25(OH)D(±SD)は60.4±13.6nmol/Lで,25(OH)D<50.0nmol/Lの者は約21%おり,25(OH)D≥50.0nmol/Lに比し,「歩く時支えが必要な者」,「過去1年間につまずき·ふらつきがよくある者」,「外出回数が週1回未満の者」の割合が有意に高かった.また,多重ロジスティック回帰分析より,「つまずき·ふらつき」の危険因子は,25(OH)D<50nmol/L(OR:4.41, 95%CI:CI 1.31∼14.86)であった.結論:虚弱高齢者の25(OH)D<50nmol/Lの者は,バランス能力·歩行能力の低下と関連があり,50nmol/L以上は必要であることが示唆された.今後,効率的な介護予防を実施するに当たり,25OHD濃度の把握は重要である.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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