日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
早期診断が困難であった高齢者十二指腸憩室穿孔の1例
廣田 智子辻川 知之木藤 克之安藤 朗佐々木 雅也藤山 佳秀
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2007 年 44 巻 6 号 p. 752-755

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抄録

86歳女性.突然の心窩部痛,背部痛が出現し,当科紹介された.初診時,心窩部に軽度の圧痛を認めたが,腹部超音波検査では胆石を認めるも壁肥厚なく,腹水も見られなかった.血液検査ではWBC 11,600/μLと上昇認めたが,CRPは陰性であった.翌日の上部消化管内視鏡検査では,十二指腸粘膜の浮腫状変化のみを認めた.その後悪寒を伴う発熱が出現し再度来院した.腹部症状の増悪はなかったがCRPは14.79mg/dlまで上昇し,腹部CT検査を施行したところ十二指腸下行脚周囲にfree airと膿瘍の形成を認め十二指腸穿孔と診断した.その後急速に症状悪化し,入院7時間後にはseptic shockを呈した.緊急開腹所見では十二指腸下行脚の憩室に穿孔を認め,ドレナージ術を施行した.術後は膵炎の合併もみられたが,術後58日で退院となった.十二指腸憩室は消化管憩室の中では二番目に多いが,合併症を伴うことは少なく,穿孔は最も稀な合併症とされている.確定診断には腹部CT検査が有用であるため,高齢者の診断困難な心窩部痛や背部痛では,症状が軽度でも本症を考慮して早期に腹部CTを施行すべきと考えられた.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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