抄録
加齢は独立した心血管系疾患に対する危険因子である.血管自身の変化だけではなく,加齢に伴いさらに様々な危険因子が重なり合うことによって血管はさらに老化していく.その結果,高齢者では心血管系疾患の罹患頻度がきわめて高いことが知られている.このように,加齢の心血管系疾患に対する臨床的重要性は明らかとなっているが,血管の老化のメカニズムに関する基礎研究は世界的にもまだ端緒についたばかりであり,その機序はほとんど解明されていない.例えば,加齢に伴い血管が硬くなることは周知のことであるが,老化がどのようにしてこれらの変化をもたらすのかという点については不明である.研究が進まない原因として,まずは老化を評価するアッセイ系がないこと,そして,なによりも多様な側面をもつ「老化」という生命現象をある1つの特定の物質と結びつけることが困難である点があげられるだろう.これらに対して最近,「細胞レベルの老化」が「加齢にともなう血管老化·機能障害」に関与していることが示唆されている.そこで本稿では,加齢にともなう血管機能の変化を臨床的な側面から分子レベルの基礎的研究までにわたって概説する.