日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
膝痛を有する中高齢女性の痛み対処方略と痛みの程度,痛みによる活動制限との関係
野呂 美文岡 浩一朗柴田 愛中村 好男
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 45 巻 5 号 p. 539-545

詳細
抄録

目的:本研究は,膝痛を有する地域在住中高齢女性を対象に,痛み対処方略,痛みの程度および痛みによる活動制限の相互関連性について検討し,痛みの自己管理を促す効果的な支援方法を確立するための手がかりを得ることを目的とした.方法:対象者は,膝痛改善プログラムへの参加を希望した地域在住中高齢女性134名であった(平均年齢62.1±8.2歳).本研究では,横断研究デザインを採用した.痛みの程度および痛みによる活動制限の評価には,日本版変形性膝関節患者機能評価表(JKOM)を利用した.また,痛み対処方略については,Coping Strategy Questionnaire(CSQ)日本語短縮版を用いて評価した.結果:年齢および痛み関連指標間の相関関係を検討した結果,年齢は,痛みの程度および痛みによる活動制限との間に有意な正の相関が認められたが,痛み対処方略とは有意な相関関係がみられなかった.痛みの程度および痛みによる活動制限は,痛み対処方略としての願望思考,破滅思考,医薬行動との間に有意な正の相関があった.痛み関連指標間の相互関連性の仮説モデルを,共分散構造分析を用いて修正·改良した結果,最終モデルの適合度指標はGFI=.980, AGFI=.946, CFI=.995, RMSEA=.022となり,統計学的な許容水準を満たした.加齢とともに痛みの程度が増し,痛みによる活動制限も大きくなっていた.また,強い痛みを感じている人は,願望思考,破滅思考,医薬行動といった痛み対処方略を頻繁に採用し,痛みによる活動制限が強められていた.結論:膝痛を有する中高齢女性の痛みの自己管理を促進させるためには,特に不適応的な対処方略の採用を減らすことが重要なポイントであることが分かった.今後は不適応的な痛み対処方略を修正するための認知行動的アプローチを,従来の運動療法を中心とした膝痛改善プログラムの中に積極的に取り入れていく必要性が示唆された.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top