抄録
高齢者の失神は,加齢に伴う変化や薬物による影響を受けやすい.また原因が多岐にわたるため,診断に難渋する例も多く,詳細な問診や身体診察が診断に重要である.今回失神が診断の契機となったバルサルバ洞動脈瘤の1例を経験した.
症例は78歳男性.数カ月前より怒責時の失神を認めるようになったため精査加療目的で当院に入院した.聴診所見上,胸骨左縁にLevine2度の収縮期雑音を聴取した.心電図で右側胸部誘導に陰性T波を認めた.心エコー上,右室流出路に突出したバルサルバ洞動脈瘤を認め,心臓カテーテル検査にて肺動脈―右室流出路の圧較差は34 mmHgであった.
バルサルバ洞動脈瘤の合併症として,右室流出路狭窄,心不全,不整脈,狭心症が挙げられるが症状がなければ見逃されることも多い.本症例では,失神を契機に診断されたが,怒責時の胸腔内圧上昇による右室流出路狭窄増強と左室前負荷の減少による心拍出量の減少が失神の一因として考えられた.
高齢であり陳旧性脳梗塞によるADLの低下があるため,手術療法は選択せず経過観察とした.4年2カ月の経過観察中症状の増悪やバルサルバ洞動脈瘤の破裂,拡大は認められていない.