抄録
加齢に伴って,糖尿病や動脈硬化,高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し,その結果,虚血性心疾患や脳卒中の発症の基盤病態となっている.これらの疾患は,多くの高齢者において共通に認められることから,老化の形質の一部として捉えることができる.すなわち,これらの疾患の究極的な治療のターゲットは,寿命を調節する仕組みそのものかもしれない.老化のメカニズムについては諸説あるが,そのひとつが「細胞老化仮説」である.近年,動物モデルにより老化の分子メカニズムが明らかになり,老化や加齢に伴う疾患において,細胞老化の重要性が示唆されている.例えば,DNA修復に関わるシグナルの障害は細胞老化を促進するが,マウスにおいてその障害があると早老症の形質を示す.インスリンシグナルの低下は個体寿命の延長をもたらすのに対して,インスリンは細胞レベルの老化を促進する.今後,心血管系におけるこのような老化シグナルが明らかになっていくことによって,抗老化による新たな心血管治療の開発が期待される.